聖山降臨1101OS-6・戦闘後翡翠の緑
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カジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグ
ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグ

名前

聖山降臨1101 OS-6・戦闘後

翡翠の緑

スキウース

近頃はあんたに会うのも一苦労ね。

……エンシオディス。

エンシオディス

ラタトスの葬儀に参列できなかったこと、誠に申し訳なく思っている。

ブラウンテイル家に起きた不幸を心より遺憾に思うとともに、当家が力添えできることがあれば、遠慮なく言っていただきたい。

スキウース

ありがとう、エンシオディス。

でも、今日あんたのところへ来たのは、その話をするためじゃないの。

エンシオディス

あなたがここに足を運んだのは、私にあなたの信頼を得るチャンスを与えるためなのだろう。

スキウース

ふん……お姉様が言ってたわ。あんたは、腰を低くしてくるときが一番信頼できないんだって。

エンシオディス

では、あなた自身は私をどう見ている?

スキウース

回りくどい言い方はやめて。そういうの好きじゃないから。

……あたしも昔は、お姉様にいつも叱られてたものよ。何をやるにも衝動的だし、考え足らずの言動ばかりだって……

だからあたしは、ずっとお姉様に証明したいと思ってたの。あの人の庇護下にいなくたって、ブラウンテイル家のために何かできるんだってことをね。

だけど、ブラウンテイル家の当主になった今、あたしの「証明」を評価してくれる人はもういない。

エンシオディス

……

理解はできる。私にも……二人の妹がいるからな。

スキウース

あんたからすれば、巫女様も、エンシアも……あたしよりよっぽど賢い妹でしょ?

エンシオディス

そう謙遜することはない。

私はむしろ、あの二人はあなたに似た粘り強さと決意を持っていると思っている。

スキウース

……

エンシアは元気にしてるの? 彼女も事故に巻き込まれたって聞いたけど。

エンシオディス

記憶に留めてもらったことに感謝しよう。彼女は無事だ。今は退院して家に帰ってきた。

スキウース

そう。エンシオディス様はいつも冷静でいらっしゃいますこと……

思うに、イェラグで起きた襲撃事件や、お姉様の身に起きたことを……あんたは早いうちに予期していたんじゃない?

エンシオディス

なるほど、それを問うべく来たわけか。

スキウース

お姉様はずっとあんたに協力してたのよね?

あたしだって、何も知らなかったわけじゃないけど、お姉様を亡くしてようやく気付いたのよ……

あんたたちの計画のことも、ヴィクトリアのことも、ライン生命のことも、メンヒが追ってる件についても……あたしの知らないことはまだまだたくさんあるんだって。

エンシオディス

……

スキウース

否定するのも、嘘をつくのもやめてちょうだい。あんたなら、お姉様が殺された件の真相を知ってるはずよ。

エンシオディス

ラタトス殺害に私が関わっていると考えているのなら――

スキウース

違うわ……そういう意味じゃない。

ラタトスとあんたの計画についてはわからないけど、それはイェラグを守るためのことだったって信じてる。

だから、あたしもお姉様と同じことをしなくちゃ……ブラウンテイル家としての責務ならどんなことでも引き受けるわ。

だから、教えてちょうだい。お姉様は一体――

シルバーアッシュの衛兵

申し訳ありません、エンシオディス様。こちらの方々がどうしても中に入れろと――

スキウース

……?

エンシオディス

我が屋敷に押し入ってくるとは、一体何用だ?

蔓珠院の使者

エンシオディス様、カランド貿易がイェラグとカジミエーシュの共同採掘場の全持ち株を、無断でヴィクトリアに譲渡したのはなぜですか?

エンシオディス

……どこからそんな話を?

蔓珠院の使者

あの採掘場が、今や全面的にヴィクトリア人に接収されたことは、誰の目にも明らかな事実です。

アドソ大長老は、カランド貿易のこうした行為は他国との内通を疑うに十分なものとご判断なさいましたので、蔓珠院としては介入権限を行使せざるを得ません。

ただちに蔓珠院へお越しください。この件について、ご説明をお願いします。

エンシオディス

要するに、シルバーアッシュ家への正式な尋問を要求しているということか。

蔓珠院の使者

今のイェラグは人々の心休まらぬ時。我々としても、これ以上対立が激化するのを見たくはありません。

エンシオディス様におかれましては、一族の長として、イェラグへの責任感を今もお持ちなのであれば、すぐさま蔓珠院へお越しいただき、共に対策を講じていただけたらと存じます。

エンシオディス

わかった。無論拒みはしない。

だが、状況を説明するにも、関連書類を整理し、準備を行う時間が必要だ。

加えて、私とスキウース夫人との話はまだ終わっていない。ゆえに今しばらくお待ちいただきたい。

蔓珠院の使者

かしこまりました。

エンシオディス

……スキウース夫人。近頃はわざわざ時間を作ってまでエンシアのことを気にかけていただき感謝する。ゆえにこちらとしても、近々あなたを正式に客人として当家へお招きしたいと考えている。

エンシアと共に、あなたのお気遣いに報いて礼がしたいのだ。

スキウース

なっ……

エンシオディス

本来、礼儀を考えるなら正式に招待状を送るべきなのだが……

急なことだったので、取り急ぎこの場で一通したためる非礼をどうかお許しいただきたい。

あなたの来訪を心より楽しみにしている。

エンシオディスは返事を聞かずに紙とペンを取り、数行走り書きした物をスキウースに手渡した。

スキウースが受け取り見てみれば、それは「招待状」ではなく、ただ一つ住所が記されているだけのメモだった。

スキウース

……ご招待に感謝するわ。

必ず、時間通りお伺いするわね。


拝啓

カランド貿易のノーシス様

あなたがこの手紙をご覧になる時点では、私はまだライン生命から状況報告の権限を付与されておらず、こちらは個人的な連絡となりますので、どうかその点ご留意ください。

この手紙はライン生命とカランド貿易の結んだいかなる契約や条約にも基づいておらず、私個人が直近のイェラグで起きている現象を分析して書いたものにすぎません。

私のデータサンプルは1101年12月7日午前3時19分、観測所が収集した音波を元としています。

この時刻に、正体不明の物体が空からカランド山へ落下したことは確実です。

現象と現象の関連性を裏付ける証拠は未だ不足しているものの、その32時間後、天災が発生したことは確かな事実です。

二つの事象を無理に関連付けようとするわけではありませんが、仮に今回の落下が歴史上唯一の出来事であれば、天災もまたそれと同じである以上、一定の関連性が疑われるように感じます。

そこで、私は今、両者の間に客観的な関連性があるかどうかを確かめようとしています。

同時に、失礼を承知で申し上げますと、それが関連しているとした場合、イェラグの現状からすると楽観視できない結論が導き出されます。

つまり、千年以上に渡ってイェラグを天災から守ってきた何らかの要素が、現時点では効力を失った、あるいは、安定性を失っている可能性があるということです。

これが単なる杞憂であると証明できるよう願っていますが、カランド貿易には、この可能性がもたらすリスクに十分な注意を払っていただきたいと思います。

私より詳細な情報を握っている関係者――カロリンも恐らく私と同じ推測に辿り着いているものと思われますが、彼女の目的は現状不明です。

私は客観的かつ理性的な姿勢を保ってこの調査を続けていくつもりですので、カランド貿易が私の行動を支援してくださるようでしたら、大変有難く存じます。

エレナ

ノーシス

……

入りたまえ。

カランド貿易の従業員

ノーシスさん、こちらにいらしたのですね。

ノーシス

この手紙をエンシオディスへ届けてくれ。最上級の機密として扱うように。

カランド貿易の従業員

わかりました、すぐにお届けいたします。

ノーシス

それで、何か用か?

カランド貿易の従業員

はい。採掘場に派遣した偵察員から報告がありました。

ヴィクトリアの紋章を付けた車が列をなし、採掘場外縁に接近しており、その具体的な目的は不明とのことです。

今はマッターホルンさんがシルバーアッシュ家の人員を連れて現場に向かっています。なるべく時間を稼いで、あなたのご判断を待つと仰っていました。

ノーシス

ヴィクトリアが動いた以上、こちらが動かない理由もない。

すぐに車を用意しろ。マッターホルンが長く持ちこたえられるとも限らないからな。

彼には、主導権を相手に渡して観察を優先しておくように伝えてくれ。私もすぐに向かう。


ヴィクトリア大使

……忠告しておきましょう。ここで私の仕事を妨害するのは賢明とは言えませんよ。

マッターホルン

こちらも命令通り動いているだけなのです。この先は機密に関わる倉庫ですので、カランド貿易の許可なく立ち入ることは禁止されております。

ヴィクトリア大使

カスター家はすでにカジミエーシュが保有していた当採掘場の全株式を買収したのですが、どなたからも聞き及んでいないのですか?

マッターホルン

ですがそちらは、業務引継ぎが途中であるはず。カジミエーシュから通達が届いたのはつい昨日のことですから。

ヴィクトリア大使

ゆえにこそ、こちらとしては事前に全資産を検査、視察しておく必要があるのです。そちら側のご意見がございましたら、私から公爵閣下にご報告した際にご判断を仰いで参ります。

ですので、今は命令通り、ただちに倉庫の扉を開けてください。

ようやく裁量権のある方がいらっしゃいましたね。

カランド貿易のノーシス・エーデルワイスさん。

ノーシス

自己紹介は不要のようですね。

ヴィクトリア大使

ええ。私がどなたの代理人として訪れたかはご存知でしょう。

そちらの経営不振で多額の損失が生じていることを踏まえ、公爵閣下は、採掘場で勤務していたマネージャーを含むカランド貿易の主要な従業員に、業務から外れてもらうという決定を下されました。

ノーシス

そのご判断に異議を唱える気はありません。業務の引継ぎに関しても可能な限り協力いたしましょう。

ヴィクトリア大使

それはよかった。ではノーシスさん、倉庫の扉を開けていただけますか。

ノーシス

そのご要望だけは、お断りせざるを得ませんね。

マッターホルンの言う通り、機密倉庫には関連規定があるという点を、大使殿と公爵閣下にはご承知おきいただけると幸いです。

ヴィクトリア大使

私が入手した資料によれば、この倉庫のセキュリティレベルが引き上げられたのは最近のことだそうですが。

その点についてもご説明いただけるのでしょうか?

ノーシス

ええ、可能です。

この倉庫は主に各種工業廃棄物を保管する場所なのですが、近頃その浄化システムと陰圧換気システムが立て続けに故障したことを踏まえて――

専門家の処置が終わるまで、一時的にセキュリティレベルを引き上げ、出入りを厳しく制限していたのです。

公爵閣下が買い取られた資産を気にかけておられるのは理解できますが、大使殿の安全のためにも検査はもう少し延期できませんか?

ヴィクトリア大使

責任は自身で負いますので、扉を開けてください。

ノーシス

どのような理由があれ、いずれにせよここはイェラグの採掘場なのですよ。

汚染物質の漏洩や、その他の危険が発生した場合、イェラグとしては行政手段を用いて介入せざるを得なくなる可能性があります。

責任を負うと仰いますが、公爵閣下に確認を取られたほうが――

マッターホルン

あなたは……

蔓珠院の使者

またお会いしましたね、マッターホルンさん。

ノーシス

失礼ながら、修道士殿はしばらく応接室でお待ちいただけますか。今はヴィクトリア大使と業務の引継ぎにまつわる協議中ですので。

蔓珠院の使者

ですがノーシスさん、私はヴィクトリア側からお招きいただきこちらへ伺ったのです。

ノーシス

……蔓珠院はいつからそこまで俗世の事柄を気にかけるようになられたのですか?

蔓珠院の使者

今や、シルバーアッシュ家を除く二家の有力者も、大衆も皆、カランド貿易のヴィクトリアとの関わり方に不満を抱いています。

大長老はすでにエンシオディス様を呼び出し、関連事項について確認を行っておられます。間もなくあなたにも、蔓珠院へおいでいただくことになるでしょう。

ノーシス

では、あなたはなぜそれを待たずしてこちらへ?

蔓珠院の使者

引き継ぎが滞りなく行われるよう、カランド貿易にできる限りの協力をしていただくためです。

倉庫の扉を開けてください、ノーシスさん。

ヴィクトリア大使

三家による主権奉還以降、イェラグの「行政手段」を握っているのは蔓珠院のほうではありませんか?

ノーシス

……

マッターホルン、扉を開けてくれ。

扉がゆっくりと開かれた。すると予想していた以上の埃が舞い上がり、ヴィクトリア大使は目を細めて、眼前を手で扇いだ。

そこからは工業廃棄物の臭いはせず、舞い上がった埃の中に源石粉塵が紛れているようにも思えなかった。徐々に視界が開けていくうちに、広大な倉庫に置かれていたものが目に入る。それは――

ヴィクトリア大使

……クズ鉄? このすべてが……?

蔓珠院の使者

……

ノーシス

……先ほど申し上げた通り、この場に置かれているのはすべて工業廃棄物です。

検査が終わり次第、ただちに離れるようにお願いいたします。このような場所に長居をすれば、健康を害してしまいますので。

ヴィクトリア大使

では、皆さんはこちらに。私一人で調べてきましょう。


倉庫の中へ踏み込めば、その空間の巨大さが実感できた。天井まで届く高さの鉄製ラックには、様々な形のスクラップが所狭しと並べられている。

だが、こんな物を置くために大型倉庫を用意するなど決してあり得ないことであり、それはあまりにもわざとらしく見えた。

大使は棚の一つに近付くと、手の届く位置を探ってみた。金属のぶつかり合う音が倉庫内に響く。

ヴィクトリア大使

(これは……)

(半分しか残ってはいないが、シルバーアッシュの私兵「チェゲッタ」のマークがついている。恐らく武器の一部だろう。破砕処理後の処分が甘かったということか……)

察しのついた大使は、ほかの場所を引き続き調べていく。カランド貿易はそれを慎重に処理していたようだが、細かな手がかりはいくつか残されており、彼はひそかに確信を得た。

ヴィクトリア大使

(ヴィクトリアの新型装備の模倣品に、大口径艦砲の部品……)

(だが、すべて失敗しているようだ。技術的な壁を越えられなかったのか……)

彼は表情を変えず、軍の振った番号やその紋章、そして多くのイェラグ語を記憶していった。

ノーシス

大使殿! そろそろ十分では?

ヴィクトリア大使

……ええ、そうですね。


大使は、待たせている人々の元へ戻っていった。

ヴィクトリア大使

おおよその確認は取れました。ありがとうございます、ノーシスさん。

現状をすべて取りまとめたうえで、ありのまま公爵閣下にお伝えいたしましょう。

ヴィクトリアの衛兵

失礼ながら上官、採掘場の内部鉄道は先ほど片付けを終えたばかりで、まだご確認をいただいておりません。

ノーシス

ヴィクトリア側も、あの内部鉄道をご利用になる必要があるのですか?

ヴィクトリア大使

はい。いくつかのサプライヤーに連絡して評価を依頼し、進めてもらっているところなのです。内部鉄道の利用で輸送コストを大幅に削減できると見込んでおりますのでね。

ノーシス

修道士殿、蔓珠院はこの件をご存知なのですか? 外交関連業務への参入をご希望とあらば、カランド貿易としても、新規参入の事業体に対する審査を蔓珠院にお願いしたいのですが。

ノーシスの問いかけが、蔓珠院の使者の思考を遮り、使者は鉄道に向けていた視線を逸らした。

蔓珠院の使者

……その件については、大長老のご指示を待たねばなりませんね。

ノーシス

わかりました。

……我らのイェラガンドに。蔓珠院の皆様には、エンシオディスを不当に責めることはなさらないでいただきたいものです。ともあれ私は、カランド貿易本社で蔓珠院の呼び出しを待つとしましょう。

蔓珠院の使者

ええ、我らのイェラガンドに。