人々、我々PA-4・戦闘前壁一枚の隔たり
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ウルサスサーミ極東炎カジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグカズデルシラクーザレム・ビリトン

名前

人々、我々 PA-4・戦闘前

壁一枚の隔たり

ロサ

……

ヴォロンツォーワ夫人

ナターシェンカ、もう一度言うわね。

もし本を返しにきただけで、以前の提案を受け入れる気がないのなら、本をそこの暖炉の上に置いて帰りなさい。

ロサ

おばさまと考えが異なるだけで、お喋りすらしてくださらないのですか?

ヴォロンツォーワ夫人

普段であれば、あなたが若さからどれほど可愛らしい間違いを繰り返したとしても、喜んで夜通し語り明かしていたでしょう。

なにせ、私はこれまで多くのことを見届けられなかったもの。あなた自身のこと、ご両親のこと、チェルノボーグで経験したこと……

ロサ

それなら、今からでも全てお話しできます。

ヴォロンツォーワ夫人

いいえ、今の私に聞く資格はないわ。

生死に関わる問題だというのに、私はあなたを説得しきれなかった――サンクト・グリファーブルクを離れて身を隠すようにも、せめてあなた自身が不利にならない証言を提出するようにも。

あなたを守れなかった以上、ご両親に合わせる顔がないわ。そんな私に、あなたから二人の話を聞く資格なんてあるはずもない。

ロサ

おばさま、それは違います――

ヴォロンツォーワ夫人

この本は、もう読んだかしら?

ロサ

ええ、最初から最後まで、全て読みました。どうしておばさまがこの本を貸してくださったのかも理解しています。

ヴォロンツォーワ夫人

扉ページには何と書かれていたかしら?

ロサ

「いかなる主義思想も、人々の美しき生活と引き換える価値を持たない。」

ヴォロンツォーワ夫人

ええ、よく覚えているわね。ヤーコフ・ペトロフの『懺悔録』。彼の死後、遺族の編集を経て出版された、反逆者が死と引き換えに遺した体験記録よ。だからこそ、私には全く理解できない……

その経験のために、命の代償を払った者がいると知りながら……どうして、選択の余地を残したあなたが同じ轍を踏もうとするの?

あなたはいつになったら、信じたものが歴史の一瞬に消えるものだと気づいてくれるの? いよいよ死が迫った時? それとも、彼のように牢獄で血を飲み込んで息絶える瞬間かしら?

ロサ

おばさま、私は……

ヴォロンツォーワ夫人

教えてちょうだい、ナターシェンカ。どうして?

ロサ

……実は、私も同じことを何度も自問してきました。ですが、もし……

……

厚かましいことは承知の上で、もう一つだけお願いがあります。

もし私がおばさまの言う通り証言を行い、自分の身を守ったなら、自治団の友人たちも同じように守っていただけないでしょうか?

ヴォロンツォーワ夫人

ええ、もちろんよ! あの方々の望み通り、証言の中で特定の名前を挙げてくれれば――

ロサ

わかりました。

公聴会には、私の証言をしたためて提出しましょう……

「懺悔の手紙」として。


余裕のない貴族

伯爵夫人?

ヴォロンツォーワ夫人

……ええ、聞いています。何かしら?

余裕のない貴族

失礼ながら、先ほど仲裁人がナターリア嬢のお名前を挙げられましたので、夫人に証言を提出していただく必要がありまして。

仲裁人

次の証人、ナターリア・ロストワ嬢は、特別な事情により本日ご欠席です。

ただし、代わりの方に読み上げてほしいとの事前申請を本人より受理しております。

ヴォロンツォーワ夫人

仲裁人さま――

アブサント

昨日、ナターリアから手紙を預かりました。仲裁委員会の皆様、ご確認のうえ代読の承認をお願いしたいです。

書記官がアブサントから手紙を受け取ると、各所から一斉に囁きの声が上がっていく。無数の視線が自分に集まるのを感じ、ヴォロンツォーワ夫人はかぶりを振った。

仲裁人

では、ゾーヤさん。本件においてナターリア嬢が経験したことについて、代読をお願いいたします。

アブサント

「公正なる仲裁委員会、ならびに公聴会にご出席の皆様へ。これは懺悔の手紙です……」

「私自身の悔恨と、この手紙が触れる繊細な内容に鑑みて、言及を避けられないパヴロヴィッチ卿を除き、特定の人物名を挙げることは控えさせていただきます。」

余裕のない貴族

(小声)夫人、これでは我々の打ち合わせと――

ヴォロンツォーワ夫人

……ひとまず、最後まで聞きましょう。

アブサント

「……この手紙が、皆様の信頼を得るに足るものであることを願います。」


「舞踏会の事件直後、ソニアの身を案じた私は、ある有力者のお力添えをいただき、事件当日に拘束された学生たちのご家族との接触に成功しました。」

「その際、ツァレフグラード区に不法侵入した『犯罪者』たちは全員、カトルガ区――現在『封鎖エリア』と呼ばれる場所に収容されていると知りました。」

「しかし意外なことに、ご高名な貴族まで収容されていたにもかかわらず、誰一人として封鎖エリア内の確かな情報を得られていなかったのです。」

「中にはご自身の立場上、封鎖エリアへ直接赴くことを躊躇うご家族もいらっしゃいました。そこで、収容された学生たちの状況を確認するため、私が代表として立てられたのです。」

「彼らから紹介していただいた人物が、封鎖エリアの管理者である枢密官のパヴロヴィッチ卿でした。その翌日、私は彼を訪問するためにカトルガ区と外界を隔てる壁へと向かいました。」


パヴロヴィッチ

……はは、そういえば、お父様のご友人であるシュヴァーロフ男爵ともお会いしましたよ。借金をしてチェルノボーグの投資に走り、全てを失ってサンクト・グリファーブルクに戻ってきた方です。

ところが一昨日、彼は両手に手錠をかけられ、二人の警官に連行されて東へ送られていたのです。そこで気になった私は、こう尋ねました――流刑になるとは、どれほどの罪を犯したのかと。

すると彼は、私の耳元で意味ありげに囁いたのです。パーティーの席で「坑夫は最高だ」と叫んだのだと。

私は驚いてその理由を問いただしました。彼が何と答えたか、おわかりになりますか?

ロサ

申し訳ありませんが、見当もつきません。

パヴロヴィッチ

彼は笑いながら、自分を連行する警官に振り向き、こう言ったのです――「流刑になれば、借金取りも私を見つけられんだろう。はははっ!」と。

ロサ

なんとも、興味深いお話ですね……もし急ぎの用事がなければ、一日中でもお聞きしたいところです。

パヴロヴィッチ

おっと、これはお恥ずかしい。私は与太話を始めると止まれない性分でして。

さあ、ロストワ様、本題に入りましょう。

ロサ

枢密官閣下、私は――

つんざくような電動ドリルの音に、パヴロヴィッチは完全に機嫌を損ねた。彼は申し訳なさそうにロサに手を振ると、立ち上がってドアの方へと歩み寄る。

パヴロヴィッチ

何をしているのです? 今日の当番は誰ですか、出てきなさい!

「十六勇士」用心棒

すまねぇ、旦那。昨日の夜、連行されてきたヤツが多すぎて……

パヴロヴィッチ

人数など知ったことではありません! 私がお客様をもてなしている最中だとわからないのですか?

「十六勇士」用心棒

わかった、すぐに止めてくる。

パヴロヴィッチ

大変お見苦しいところをお見せしました。それで、先ほどはどこまで話しましたかな?

ロサ

……僭越ながら、お尋ねしたいのですが。

各区の軍警は、統一された装備を身に着けるはずです。ですが先ほどお話しされていた方は、軍警の武器を持ちながらも装いは私服でした。この地域には、何か特別な事情がおありなのですか?

パヴロヴィッチ

特別ですと? ははっ、ロストワ様もご冗談がお上手だ。まさか、ゴミ捨て場を特別な場所だとお思いではないでしょう。

サンクト・グリファーブルクが産業構造の転換と進化を経る中で、古い工業エリアは長らく放置されてきました。そこで議員の方々から、ここを改築し再利用すべきとの声が上がったのです。

たとえば、囚人や立ち退きを拒む貧民を収容し、封鎖エリアで生産に従事させれば、一挙両得ならぬ一挙多得でしょう。

これまでは問題なく機能していたのですがね。ここ数ヶ月の資源不足のせいで、工場は全て停止してしまったのです。

はあ……ウルサスという国は、無駄と判断したものをすぐに蔑ろにします。正規の軍警は人数に限りがありますし、私に与えられた少ない予算では、ああいった連中を雇うのが精一杯なのです。

幸いなことに、連中も今のところ大きな問題を起こしていませんがね。

ロサ

ですが、先ほどのドリルの音を聞く限り、あまり改築といった様子では――

パヴロヴィッチ

ああ、大変申し訳ございません。あれは歯科医による手術です。私としても、大切なお客様を驚かせたくはなかったのですが。

ロサ

歯科医? このような場所に?

パヴロヴィッチ

ええ。虫歯の部分をドリルで削り、腐った箇所をえぐり出し、新しい材料を詰め込む……歯はもちろん、思想においても同じこと。

さて、ロストワ様の好奇心も満たされたことでしょうし、そろそろ本題に移りましょうか?

ロサ

……失礼いたしました。

先ほどお渡しした名簿はご覧いただけたかと思います。そこに掲載された学生たちのご家族から、彼らの状況を確認するよう依頼されてきました。

その中には政府高官や、ご高名な貴族の跡取りも少なからず含まれています。どうか便宜を図っていただけませんか?

パヴロヴィッチ

もちろんですとも。確かに、今回逮捕されたのは学生ばかりのようですね。親心子知らずとはよく言ったものですが、皆様が跡取りをどれほど気にかけておいでか、私も重々承知しております。

彼らがほんの少しでも親心を理解していれば、あれほど反逆的で親不孝な真似はしでかさなかったでしょう。

ですが、どうかご理解ください。私もカトルガ区の未来を我が子のように気にかけているのです。

ロサ

枢密官閣下、より深いお話に踏み込む前に、改めて申し上げます。私に依頼されたご家族の方々は、何よりもまずご子息、ご令嬢の無事を確認したいとお望みなのです。

パヴロヴィッチ

ええ、ええ、そうでしょう。後ほどたっぷり時間を取り、彼らの無事を確認していただくつもりです。

ただし、この名簿に載っている名前のうち二つについて、ロストワ様にお伝えしなければならないことがあります。

ロサ

どうぞ。

パヴロヴィッチ

まずナウムさんですが、私の知る限りでは昨日すでに釈放され、今頃はご帰宅されているはずです。おそらく、入れ違いになったのでしょう。

ロサ

教えていただきありがとうございます。戻り次第、ナウムさんの保護者に確認いたします。

パヴロヴィッチ

ええ。そしてもう一人――ソニアさんですが。

実はほんの数日の間に、彼女は一躍ここの有名人になりました。部下からも噂はかねがね聞いております。

ロサ

ソニアが、どうかしたのでしょうか?

パヴロヴィッチの張りついたような笑顔に、ロサはふと言いようのない違和感を覚えた。

パヴロヴィッチ

そうご警戒なさらず。ただ不思議に思いましてね……貴族でもなく裕福な家のご令嬢でもない、ごく普通の学生である彼女の名前が、どうしてこの名簿に載っているのか。

ロサ

……隠すつもりはありません。ソニアは私の友人であり、決して凶悪な暴徒などではないのです。だからこそ私自身で彼女の名前を書き足し、状況を確認させていただくつもりでした。

パヴロヴィッチ

ああ、なんということでしょう。ロストフ家のご令嬢の頼みとあれば、断る理由などありませんとも。

ただし、二つほど条件がございます。第一に、ソニアさんにはもう数日封鎖エリアで平穏に過ごすようお伝えください。数日後には、必ず解放するとお約束します。

第二に、学生たちのご家族にこうお伝えください。議会に提案を撤回させるよう圧力をかけ、封鎖エリアを「維持」していただきたいと。どのような手段を用いてもです。

ロサ

「維持」とは? カトルガ区は、間もなく廃止される予定なのですか?

パヴロヴィッチ

おや、ロストワ様、ヴォロンツォーワ伯爵夫人からお聞きでないとは。単なる廃止ではなく……完全に放棄される予定なのです。

帝国の資源枯渇は、もはや公然の秘密。節約のため、ついには首都の工業地帯すら放棄せざるを得ないほどに困窮しているのです。

一週間も前から、議会では封鎖エリアを放棄し、荒野へ打ち捨てるという案が提出されていました。その案が議長の承認を得ている以上、それは陛下の黙認を意味します。

幸い、伝統貴族の方々からのご支持により、ここまで引き延ばすことができました。ですが、それも長くはもちません。

お見受けしたところ、この名簿には有力な産業貴族が多く名を連ねています。もし彼らがご親戚やご友人を動かし、一斉に反対の声を上げれば、陛下や議会も再考せざるを得ないでしょう。

ご子息、ご令嬢の命に関わることですから、彼らも真剣に対応するはず。そうして封鎖エリア維持の勅令が下った暁には、全員を解放いたします。

ロサ

……そのようなことが、私に実現できると?

パヴロヴィッチ

少なくとも、私は期待しておりますよ。あなたはこの名簿を手に、誰も近づこうとしないこの場所まで臆さず足を踏み入れ、友人を救おうとしているのですから。

言い換えれば、ソニアさんを含む全員の命運が、あなたのご判断で決定するということです。ナターリア・ロストワ様。

ロサ

学生たちの保護者にはお伝えいたします。ですが、その前にソニアと会わせていただけませんか?

パヴロヴィッチ

もちろんです。

「松葉」君、来なさい。

こちらのお嬢様をソニアさんのところへ案内してさしあげなさい。その際は、必ずナターリア様のお名前を伝えるように。


雇われ用心棒

ここからあいつ――いや、ソニアの拠点まではそう遠くねぇ。話を通してくるから待っててくれ。

ロサ

ソニアはもうここに拠点を持っているのですか? それに、どうして「話を通す」必要が?

雇われ用心棒

お前も友達なら知ってんだろ、あいつがどんだけ手強いのか。

ロサの口元に、思わず笑みがこぼれた。底冷えする薄暗い通りの向こうから吹き抜ける風に、彼女は帽子を押さえて顔を背ける。

その時、廃墟から突然灰色の影が飛び出してきた。道の中央で立ち止まったそれは、痩せこけて皮膚病を患った雲獣だった。口に何かを咥えながら、警戒心を露わにしてロサを見据えている。

その光景に、ロサは目を見開いた――それは紛れもなく、人間の指だった。蒼白く、硬直し、爪の間には黒い泥と血が詰まっており、断面は嚙み砕かれた枝のように千切れている。

雇われ用心棒

*ウルサススラング*! 消えろ、このクソ畜生が!

嬢ちゃん、大丈夫か?

ロサ

ええ……平気です。でも、さっき咥えていたのは……いえ、なんでもありません。

通りにずっと立っていると冷えてしまいますね。申し訳ないのですが、なるべく早くソニアを呼んでいただけませんか?

雇われ用心棒

すぐに呼ぼう。

用心棒の背中が見えなくなると、ぞっとするような寒気がロサの全身を襲い、背筋をぴんと張っていた体が急に崩れ落ちた。

ロサはよろめきながら、冷たいレンガの壁にもたれて口を覆った。喉の奥からこみあげてくるものを無理やり飲み込んだが、それでも溢れ出る涙を止めることはできない。


千切れた指、屈辱に塗れた魂の悲鳴、チェルノボーグでの混濁した記憶。その全てが狂ったようにロサの脳裏に押し寄せる。

こんな経験は初めてじゃない。一人でも耐えられる――

だめ、だめよ、ナターリア。これはみっともなくて、許されないことで、乗り越えないといけない壁なのよ。


ロサは地面にうずくまり、鉄の匂いが立ち込める冷たい空気を大きく吸い込んで、腕の震えを止めようとした……

ズィマー

ナターリア?

ロサ

はぁ、はぁっ……!

ズィマー

過呼吸か……! クソッ……! ナターリア、アタシの声が聞こえるか?

ロサ

え、ええ――

ズィマー

答えてくれ。今、オマエはどこにいる?

ロサ

いま……いまは……封鎖エリアに……

ズィマー

そうだ、封鎖エリアだ。*ウルサススラング*! どいつもこいつも自殺志願者みたいにノコノコやってきやがって。

……チッ、愚痴ってる場合じゃねぇな。ナターリア、よく聞け。オマエは一人じゃねぇ、アタシがそばにいる。

ナターリア!

ロサ

ソニア……?

ズィマー

ああ、アタシだ。少しは楽になったか?

ロサ

ソニア……ええ、平気よ。また会えてよかったわ……

あなたの方も、無事だったのね。

ズィマー

まだ混乱してやがるな。これが何本かわかるか?

ズィマーは三本の指を立て、ロサの目の前に突き出した。

ロサ

三本よ。

ズィマー

ふん、少なくとも頭は大丈夫そうだ。

ロサ

ありがとう。でももう大丈夫よ。冷たい風に当たりすぎたせいで、咳が出て胸が少し痛くなっただけ。

ズィマー

アタシの前では強がらなくていい。さっきアタシを呼びにきたヤツに何かされたか?

ロサ

本当になんてことないの……いいえ、そんなことより。

聞いて、ソニア。私がここにいられる時間は限られているから、今の状況をなるべく手短に伝えるわ。

ロサは周囲を見回し、もう少し近寄るよう合図した。

ズィマー

……なるほどな。ここを仕切ってるヤツに通してもらったってわけか。

先に伝えておくが、リェータもアタシと一緒にいる。他に聞いておきたいことはあるか?

ロサ

ロザリン……どうしてもあなたを探しに行くと言って譲らなくて。事務所に手紙を残して行ってしまったの。

ズィマー

アタシを助けようと必死だったんだ、アイツを責めないでやってくれ……それより、他の皆は?

グムは元気か? イースチナは怒ってないか? それにゾーヤや教官たちは……

ロサ

みんな元気よ。でも、みんなあなたのことを心配しているわ。

私がここに来たのも、あなたの無事とこの封鎖エリアの状況を確認したくて……

ズィマー

道中で何を見たかは知らねぇが、オマエが見たものよりずっと酷い状況なのは間違いねぇ。

食い物も燃料もねぇし、まともな飲み水すらねぇ。いろんなヤツらが派閥を作って、あちこちで縄張りと資源を奪い合ってやがる。

そうやって、人が毎日死んでるんだ。

ロサ

パヴロヴィッチは全員を解放すると言っていたわ。でも、いくつか条件があって――

ズィマー

おい、あんなヤツの言葉を鵜呑みにしてねぇよな?

ロサ

ええ、もちろん信じていないけれど……

ズィマー

わかってる、オマエも他に手がなかったんだろ。じゃなきゃ、あちこち頭を下げてまでここに入り込んだだろうに、アタシの様子を見て情報を伝えるだけなんてのは不自然だ。

なんつーか、さっきは明日にでも全員死んじまうように言ってビビらせちまったが、アタシらは初めて見る状況でもないんだよな……

明日木っ端微塵に爆発しようが誰も気にしない封鎖エリアに、生き残るために本能だけで潰し合う学生ども……

どれも、見覚えがあると思わないか?

ロサ

……ねえ、何か必要なものはある? 私が外に出たら、どうにかしてみんなで方法を――

ズィマー

だったら教えてくれ。この要塞みたいな外壁の上には、武装したチンピラども以外に何人いる?

ロサ

数人だけよ。パヴロヴィッチが雇った用心棒と、旧式の軍服を着た人たちを合わせても……十人もいないわね。

ズィマー

……やれるな。

ズィマーはもう一歩ロサに身を寄せ、緊迫した様子で声を潜めた。

ズィマー

(小声)もしできるなら、どうにかしてアイツらの武器の供給を断ち切ってくれ。

ロサ

(小声)えっ? さっき見た限り、あの「警備員」たちは素人のようだけれど……

ズィマー

(小声)オマエは知らねぇだろうが……

(小声)ここ数日間、毎日弾薬やら重火器が運び込まれてやがる。もし全部の高台にあんなデカブツが配備されたら、アタシらは一巻の終わりだ。

ロサ

つまり……

ズィマー

言葉通りの意味だ。

ロサ

……わかったわ。外に出たらみんなと相談して、どうにか方法を考えてみるわね。

ソニア、それとロザリンも……気をつけて、どうか無事でいてね。

ズィマー

心配すんな。アタシは絶対に、皆を連れてここを出る。

あの時みたいにな。