喧騒の掟 CB-4・戦闘前
7:59P.M.
p.m.07:59 天候/曇天
龍門人工河川 埠頭
もう二度と船に飛び乗るんじゃないぞ! 危ないだろ!
ごめんなさい、これには理由がありまして……
ところで、いまサンクタの人を見ませんでしたか?
いや見てないな。本当に勘弁してくれよ。このキャンディーは今夜のパーティーに使うものなんだ。もし配達が遅れたらタダじゃおか……ん?
さ、サンクタ……
はっ! モスティマさ——。
モスティマ? 君、モスティマを知ってるの?
……すみません、人違いでした。
(この人、どこかで見たことがあるような……?)
コホンッ、とにかく今回はこのぐらいにしておいてやるが、もう二度とこんな危ない真似するんじゃないぞ!
ご、ごめんなさい。本当にお騒がせしました。
うーん……フォルテの子供……なんとなくなにか忘れてるような……なんだろう……
あっ!
わっ!? な、なにするんですか!?
君の角にキャンディーがひっかかってるよ!
あっ、本当だ。返しに戻った方がいいかな……
それから、この角、思い出したっ! あのフェンツのロゴマークと同じだね!
君はフェンツ運輸の若旦那くん、そうでしょ?
わ、若旦那くん……
ところでソラ先輩、この道で本当にテキサスさんたちと合流できるんですか?
安心して。テキサスさんが何を考えてるか、手にとるように分かるんだから!
はぁ、そうなんですね。
……この声、やっぱり聞き覚えがあるような。一体どこで?
「先輩」かぁ~、えへへ、あたしにもトランスポーターの後輩ができる日がくるなんてー! みんなについてはどう思う?
皆さんにお会いした感想ですか?
とても……えーと……その…刺激的でした。
あはは……どんな状況だったのか分かっちゃいそう……
あっ、ごめんね!
ちゃんと前見て歩けよ! チッ!
おい、ぶつかってきたのはそっちでしょ——。
あ? てめぇには関係ねぇだろ?
なんだと!
いいよいいよ、ほっとこう。
でもあいつ、ぶつかったときにソラ先輩の財布を——。
へへ、知ってるよ。でもあのお財布には、パンプキンキャンディーしか入ってないからいいの。本当のお財布はこっちだよ、ほら~!
「トリック・オア・トリート」ってね。
あいつはトリックしたかっただけだし、それに今日はハロウィンではなく……どうしてわざわざそんなことを?
龍門は最近、色々なことがあったからね。今はそう見えないけど。
安魂夜の暖かなロウソクって、この都市の隅々まで照らしてくれるわけじゃないから……光の当たらない子たちが可哀想で……
えへ、でも実はとっさの思いつきなんだけどね。悪くないアイデアでしょ?
もし財布が盗まれたのがぼくだったらどうするんですか……
この先を抜けると、合流場所に着くよ。
ここは……公園ですか? 一体なにが……?
見て、やっぱりあそこにいたよ。
もご――もごもご、もごっ!
ヘイ、これ以上口を割らない気なら、火を点けちゃおうかなぁ?
おい兄ちゃん、ええかげん白状せんとアカンでぇ。この花火でホンマに天国行きにしよってもええんやで?
……お前たち、そいつの口に貼ってるテープを剥がしてないぞ。
あっ、そうだった。ごめんごめん、えいっ!
――――――!!
てめぇ、この野郎! 俺らがどこのモンなのか知っててやってんだろうな?
……シラクーザの、マフィア。
うっ、オメエ、て、テキサスか……俺ら…お前らなんかにビビると思うなよ!
ハイハイ。分かってるって。うちのボスの秘蔵品をぜーんぶ吹っ飛ばしちゃったしさ。アソート缶爆弾なんて、ほんっと子供じみたトラップだね。
……何言ってるんだ?
ん?
俺はアソート缶爆弾なんて知らねぇぞ、バカバカしい! ウチのボスが手ぇ下して、そんなんで済むかよ。お前らなんてすぐ木っ端みじんに——うぶっ! もがが!
なんかコイツ生意気すぎるんだけど。やっぱり打ち上げちゃう?
我慢しろ、エクシア。こいつに喋らせてやれ。
ぶはぁっ――お前らはなぜ龍門の連中が俺たちのことを見て見ぬふりをしているのか、不思議に思わないのか!?
いや、別に毎月警察署に行って、公共物破損の罰金をちゃちゃっと払えば、普段は私たちにも見て見ぬふりをしてくれるよ?
マジかよ……
ちょいとエクシアはん、話の腰折ったらアカンでぇ。ええから続けてドーゾ。
この…余裕こきやがって……!
あの方はな、俺らのペンギン急便への動きを全て黙認したんだよ。同じ龍門のグレーゾーンにいるモノなら、これが何を意味してるのか分かるだろ?
いやいや、あたしたちは、合法的な営業許可証を持ってる運送会社だよ? それに運営状況も別に悪くないし? 一緒にしないでもらいたいね!
だからなぜ毎回私たちの扱いがこんな……はぁ、まぁいいか。
それであの方とは、誰だ?
しかもその意味ありげな言い方、ほんとアホっぽいよね。雑魚感がタダ漏れっていうか。
お前ら、まだシラを切るのか!? 鼠王はな——。
お~い! テキサスさん! みんな!
あっ、ソラ! やっほ~!
なんや、バイソン坊も一緒みたいやな。
へへ、途中でぼっちになってたバイソンくんと偶然会ってね。連れてきちゃった。
……皆さん、ここで何をしているんですか? エンペラーさんは?
ボスは確認したいことがあるって、どっかに行っちゃった。
ソラ、他にここに来るときに会った人は?
え? いない……と思いますけど。
ん? なんであたしを見んの?
な、何でもない。とにかく今の状況はバイソンくんから聞いたよ。これからどうするの?
まずは、こいつから聞けることを聞き出して、後は臨機応変ってやつかな。
待ってください、エクシアさん。あの……
実は、さっきモスティマさんという方に偶然会ったんです。でも、途中でいなくなってしまって……
えーと、つまり、ぼくたちはマフィアの包囲網から抜け出して、そしたら彼女は——
……彼女のことは心配ないよ。よくあることだからさ。あいつ、急にいなくなったと思ったら、数年間も音沙汰ないなんてこともあり得るから。
——数年間?
せやなぁ。そういや、ウチもこの会社入ってから、モスティマはんの顔なんて見たの数えるぐらいやわ。
あはは、エクシアのためにも、この話はもうこの辺にしといたほうが……
やっぱり……常識というのが通用しないんですね……
トランスポーターとしての彼女は特殊だ。
ボスと契約を結んではいるものの、それよりも彼女はラテラーノの——。
……
——エクシア、ボーっとしてないで、マッチに気をつけて!
あっ、ヤバっ。
ふんご――もごもご――!!
あっちゃ~。こら手遅れやわ。やらかしよった。
ふがが――!!!!
何事だ、いまフロンゾの叫び声が聞こえたぞ!?
あっちの方からだ!
へぇ、本当に人間を天まで連れて行けるんだぁ。あの花火、やっぱ凄いんだね。
奴らが来たぞ。左右で二手に分かれて対処する。