暗黒時代・下 1-8・戦闘前
意志
アーミヤ、ドクターを連れて離脱してくれ!
急げ、今すぐに!
そんな……そんなことできません!
君も感じ取っているだろう! このままでは、全員ここで命を落とすことになりかねん!
あのタルラという人物は――
彼女は、まさしく怪物だ!
それでも、一緒に戦います! そうすれば、きっと可能性は……!
――ドクターのことはどうする? 安全を確保できるのか?
……そ、れは……
E4小隊! これより、この場にとどまり、奴らを足止めするぞ!
アーミヤとDr.、そして医療班が撤退する時間を稼ぐんだ!
――待った。その役目、俺たちに任せてもらおうか。
Ace、何を言って――
任せてくれと言ってるんだ。俺は本気だぞ、ニアール。
だが……! 周囲のすべてを融かしてしまう相手に、どう対処しようというんだ!?
そうですよ! あなたたちを残して、撤退なんてできません!
ロドスは……絶対に、みなさんを見捨てたりはしませんから!
アーミヤ、もう時間がない! 撤退するんだ!
――頼む、俺たちを信じてくれ。
っ、ですが……! ロドスの仲間が犠牲になったらと思うと……!
作戦目標を忘れるな! 何のためにここへ来たのか、思い出せ!
もとの目標が何であろうと、これだけは譲りたくないんです!
――
なんだ……? 彼女の手に、何かが集まって……
ま、周りの空間が……歪んでるような……!?
――いや、あれは陽炎だ! 熱された空気のせいで、景色が揺らめいて見えるのだろう……!
! 気をつけてください! あのアーツは――
待って……ダメ! ニアールさん! 戻ってください!!
あれは、ただのアーツなんかじゃ――
――少し、静かにしてもらおうか。
ぐ、あっ……!
……っはあ、はぁ……ッ!
まずいッ――ニアール!
が、はっ……来るな! この程度……大したことは、ない……!
……こんな……火傷、くらい……で……
火傷くらい、だと……? バカを言うな!
鎧をそこまで傷つけられておいて、強がるんじゃない!
これ以上戦うのはよせ、すぐに離脱を――
――来るなと、言ったはずだ!
っ、この頑固者め……!
――ふむ、面白い。
伏せろ!
ぐっ、ごほっ……今のは、一体……!
辺り一帯が融け落ちていく……
まるで、見えない炎が頭上で広がっているような……あんなものを喰らえば、ひとたまりもないぞ……!
こうなれば全員、撤退だ! 無駄な犠牲を出すわけにはいかん!
……
我々は……何を、相手に……しているんだ……?
とにかく、あのアーツを止めないことには打開できんな……
――狙撃オペレーター! 奴に照準を!
――
――確かに……抵抗とは、大地に希望を芽吹かせるものだ。
しかし、その抵抗が貴様らの運命を変えることはない。
撃てッ!!
――チェルノボーグは解放された。
それを以て、我らはすでに目的を果たしていたが……貴様らに、少し興味が湧いてな。
何……?
まあ、あくまで興味をそそられただけ、なのだが。
何しろ、貴様らは選択を誤ったのだ。
ロドスよ。――真の意味で、感染者側に立つべきだったな。
何が……起きたんでしょうか?
どうして、広場中が焼けて……
今のは、一体――けほっ、ごほっ……
い、息をするだけで……喉が、焼けて……しまいそう……!
な……何もかも、燃え尽きちまった……
奴のそばには、弓矢どころか、石ころすらも残ってない……
この一瞬で……周りのすべてを、焼き尽くしたのか……!
――貴様らが、解放者にふさわしい粘り強さを持っていることは認めよう。
……こんなふうに、塵も残さず燃やしてしまえるなんて……
……アーミヤ。これでわかったはずだ。
……!
――誰かが残って、奴を止めなければならない。
――だが、それにはもう飽いた。
……っ……!
アーミヤ!!
貴様らは同胞を殺めたのだ。報いを受けさせねばなるまい。
さあ、私好みの結末へと導いてやろう。
――滅びよ。
ッ、まずい……!!
退避しろ! 行け、早く行けッ!!
あんな攻撃を喰らったら終わりだ……!
急げ、アーミヤとドクターを守れ!
いや、これでは間に合わん――
私が奴を足止めする!
きゃああっ!
……?
……あ、れ……?
あ……アーミヤさん!?
――誰一人、傷つけさせはしません。
……
絶対に……止めてみせます!
――ほう?
ぐ、っ……
私が……守ら、ないと……!
たった一人で……あのアーツを、押しとどめているのか……!?
だが、あれほどの規模だ……受け止めきるのは無理があるぞ……!
たとえアーミヤでも……
彼女のアーツを以てしても、長くはもたん!
そんな……アーミヤさん!
……問題、ありません……
私は……大丈夫、ですっ……!!
みなさんを……守らないと、いけませんから……!!
……黒い障壁が……アーツを、阻んでくれてる……!
く……う、ああっ……!!
ま、まずい……! 障壁が燃えていくぞ……!
アーミヤ、もうよせ!! このままでは、お前の指輪が――
――ごめんなさい、ドクター……
たとえ……そうなったとしても……
それが厄災を招くことになったとしても……そして、私自身がどうなろうとも……!
私は、二度と……目の前で、大切な人を……
――ふっ。
良い覚悟だ。
っあ……ああああっ……!!
アーミヤ!!
くっ……これ以上、黙って見てはいられん!
何をするつもりだ?
あの厄介な龍のアーツを止める!
お前、まさか……
――「カジミエーシュの光芒よ、この耀騎士が身を捧げよう」!
っ、ドクター! 早く行け! 我々がアーミヤをサポートする! だからお前は……
――はァッ!
う、ああああっ!!
……っ、え……?
もう大丈夫だ、アーミヤ。
――Ace、さん……?
お前は十分頑張った。
だから、一人で重荷を背負うな。俺たちにも少しは分けてくれ。
私は――
アーミヤ……!
――ドーベルマン、皆を連れて先に行け! それと、ニアール! この場は俺たちに任せてもらおう! ……なに、すぐ追いつくさ!
……Ace、お前……
そん、な……Aceさん……
っ、絶対に……帰ってきて、ください……!
——
お前さんは、きっと俺のことを覚えちゃいないんだろうが……
俺のほうは、お前のことを覚えてる。昔どんな奴だったのかってこともな。
……いつの日か、お前には……アーミヤと一緒に、この残酷な大地と向き合うべき時がくるだろう。
だからどうか、あの子を守ってやってくれ。
――さあ、行くんだ。
幸運を祈る!