相変臨界 17-17・戦闘後
疑うことなく
くそっ……!
あの臆病者どもめ、どいつもこいつも遮蔽物の陰に隠れやがって。こっちは壁の内部の地形には詳しくないし、これを突破するのは骨が折れるぞ。
タルラはあとどれくらいで来られるんだ?
向こうは敵が大勢いるから、もうしばらくかかりそうね。
今は彼女の指示通り、できるだけこの場の軍を足止めして、彼女が援軍に来てくれるのを待ちましょう――
ん? 今の音は――
彼が言い終わるより前に、もう一発の砲弾がその頭上を通り抜け、背後の仲間を襲う。
仲間に向けて「避けろ」と彼が呼びかけようとしたその時、一機のドローンが宙を舞い、砲弾を空中で迎撃した。その爆発の衝撃で、地面までもが振動する。
こ、これは……クロージャさんか!?
背後で機械の駆動音が鳴り響くと同時に、無数のドローンが次々に上空へと舞い上がり、風切り音と共に砲弾へと向かっていく。
ふふん、タルラの援軍を待つまでもないでしょ。
みんな、時間を稼いでくれてありがとう。おかげでジャミングへの対策もばっちりできたよ。
遮蔽物スキャン、ターゲットをマークして。自然発火プロテクト解除――いっけー! 目にもの見せてやって!
ドローンが次々に石壁の門を飛び越えていく。その直後、遮蔽物の後方から爆発音が轟き、絶えることなくウルサス軍人たちの悲鳴が上がっていく。
この規格外の攻撃を前に、衛兵たちは完全に混乱に陥ったようだ。空飛ぶ鉄の塊を処理しようと慌てて武器を向けるあまり、もはや彼らは自分の居場所を隠す余裕を失っている。
なんて有用なドローンだ。俺たちもこういうのを使えたら――
いや、今はそれどころじゃない。絶好のチャンスだ! みんな俺に続け、突入するぞ!
ふっふーん……ミッションコンプリート!
クロージャはそう言って、思わず指をパチンと鳴らした。
皆……
へへっ、ここはもうあたしたちが片付けといたよ。石壁の脇の門は制圧済み!
とはいえ、中にはもっとたくさん衛兵がいるからね。キミの助けが必要だよ、タルラ。
……ああ。
ウルサス軍はすべて私に任せてくれ。クロージャさんはロドスの仲間を探しに行くといい。そちらの行動の邪魔をされないよう、レユニオンが援護する。
奴らには、清算しなければならないことが山ほどあるからな。
ゼルグラード機密区 ???
1102年1月22日 14:28
……ザザッ……応答せよ……ニコノフ大佐……
……敵が石壁の防衛線を突破した。奴らが通った場所は火の海となり、衛兵の中隊からの応答もない……
……ただちにそちらの司令部の状況を報告せよ。燃料工場は極めて重要だ。あの施設の感染者資源を死守せよ! 仮に危険が生じた場合は、緊急プランで対応を――
その時、倒れた男の懐から何者かが通信機を拾い上げた。
それはどのようなプランだ?
……
……お前は誰だ?
この通信機を拾った者だ。そちらの大佐は、先ほど私の手にかかって死んだ。
なんだと!? クソッ、一体何が目的だ!
お前はただ、次は自分の番だということだけを知っておけばいい。
彼女が指に力を込めると、通信機はたちまち粉々に砕け散った。その部品は次々に地面へと落ち、乾いた音を立てていく。
終わったぞ、タルラ。外に残っていた敵兵は全部片付けた。事前の計画通り、クロージャさんは石棺を、シルカさんは若将軍を探しに行った。
それで俺たちが探してる「燃料工場」だが、捕虜どもの話ではここにあるらしい。
奇遇だな……私も先ほど、彼らの上官から同じことを聞いたところだ。
扉を開けてくれ。
鋼の扉がゆっくり開くと、中には人の背丈ほどのカプセルが数十個並んでいた。一行は戦地に慣れているとはいえ、これから目にするものを察し、恐怖から本能的に目を閉じそうになる者もいる。
だが、予想に反してこの場は壁の外の工場とは少し異なっており、カプセルの下には赤いランプが点滅していた。タルラは数歩前に進むと、最も手前にあるカプセルの内部の状況を確かめる。
中にいるのは若い女性だった。彼女の身体に欠損はなく、無数の細長いチューブが口と鼻に繋がれていて、体表の源石結晶はくすんだ黄色のわずかな光を放っている。
ここのはランプが全部ついてる……拡張ブロックの時とは違うな。
おい、この人、瞼が動いたぞ!
……まだ助けられるはずだ。ひとまずメインブレーカーを落としてくれ。
耳をつんざくような音と共にレバーが引かれ、それと同時に一閃の刃が走った。
タルラの前のガラスが真っ二つに割れ、油のような保存液が勢いよく溢れ出し、彼女の足元に飛び散る。
その液体と共に前へと倒れ込んできた女性を、タルラは一歩前に出て支えた。そしてもう片方の手で、彼女の体に繋がれたチューブをすべて引きちぎった。
……うっ……
まだ意識がある……急げ、他の人たちも助けるんだ!
了解!
今この時、生への望みが全員の目を覚ましていた。先ほどまでの恐怖は力に変わり、彼らは残りのカプセルへと駆け出していく。そうしてしばらくの間、ガラスの割れる音と、人々の声が響き渡った。
……私、助かったの……?
ああ、もう大丈夫だ。
二度とあの連中に手出しはさせないと約束しよう。
レユニオンね……
……なに?
絶対そうよ……私たちを救ってくれるのは……レユニオンだけだって、わかってるもの。みんな知ってたことだわ……
ここに連れて来られたばかりの頃は、多くの人が泣いてばかりだった。特に子供たちはね……でも、誰かがあなたたちの話を始めたら……みんなまた、未来を信じられるようになって……
なのに、あの将校たちはその話を遮って……レユニオンは狂った連中ばかりの、テロ組織だって言い出したの……
だけど、このウルサスでは……狂った人でもなければ、感染者を気にかけようなんて思わないでしょ……
ありがとう……本当に……
ところで……あの白髪のリーベリさんはどちらに? あなたたちと一緒じゃないの……?
白い髪のリーベリというのは?
あなたたちが来る前に、ここへ来ていたのよ……諦めなければ、じきに助けが来るだろうって言ってくれたの……!
それに、彼女はこうも言ってたわ――
抗うことを諦めるな。飼い慣らされたものは軟弱になる。
そして力を持つ者だけが、生き残る資格を持つのだ。
……!
タルラ、ほかの人たちも助け出したぞ。別の工場にも助けを待つ感染者がいるだろうし、急がないと。
……ああ。この方を支えて、外に連れ出してくれるか。
ここは、私が片付ける。
仲間が弱りきった女性を支えて出ていくと、タルラはゆっくりと立ち上がり、一歩ずつ扉へと向かい、それから振り返った。
この「工場」は今やひと気もなく、静まり返っていた。溢れ出した液体があちこちに広がり、遠くに最後まで残った微かな光を反射している。
別れを告げるかのように、タルラは手を伸ばした――すると、至る所から同時に烈火が立ち上り、青い石材を飲み込んでいく。
感染者に課された長い苦役が、今ようやく終わったのだ。
……誰もいないの?
広々とした部屋には誰一人おらず、まだ燃えている暖炉から、薪の爆ぜる音のみが響く。
シルカは本や書類が散乱した机に歩み寄り、その一番下から記号がぎっしりと書き込まれた紙を一枚取り出した。その右下には、真新しい署名がある。
……アナトリー……
誰かいるのか?
ん? おかしいな……物音がしてたはずなんだが。
不意に、彼は首元を掴まれるのを感じた。彼はそのまま足が宙に浮きそうになるほど持ち上げられ、柱に激しく叩きつけられた。部屋の中に、重く鈍い音が響く。
この孤立した衛兵が激しい目眩と痛みから立ち直る前に、背中に剣先が押し当てられた。服越しに、切先がわずかに食い込んでくる。
アナトリーの居場所を言うか、命を捨てるか、選びなさい。
わ……わかった、言う!
ほんの数時間前に……若将軍はある連絡を受け、急いで親衛隊を連れてここを離れた。
連絡というのは?
俺にはわからな……うああっ!
わ、若将軍は「あんなクズどもにはゼルグラードに指一本すら触れる資格はない」と怒り狂って、何かを回収しに行くと言っていた。
「クズども」? それで、彼はどこに行ったの? まだ都市内にいる?
プロトタイプのコアに関係するラボをいくつか回ってから、街の東に向かった……頼むからもう勘弁してくれ、あの人が何を話していたかなんて、俺には見当もつかないんだ!
……そう。
念のため言っておくけれど、私がここに来たことは誰にも言わないで。
わ、わかった、絶対に――
言い終える前に、短剣は彼の胸を貫き、そのまま柱へと突き刺さった。鮮血が噴き出し、柱を伝って流れ落ちていく。
シルカは武器を振って血を払うと、窓の外に目を向けた。
「プロトタイプのコア」、それが彼らの言う「石棺」ね……
石棺が解体されたというのは……?
石棺は今、どういった状態なんだ?
ウルサスにとって石棺は巨大なエネルギー源になりうるものだが、それ以外の機能はすべて不必要なんだろう。
ここの研究員たちには、ケルシーの残した封印プロセスを突破するすべがなかった。それゆえ彼らは、石棺を強引に解析することにしたんだ。
現状で言えば、我々が事前に想像していた最悪のシナリオ通り、石棺の生体修復機能は完全に破壊されているようだな……
この場の機材をすべて回収できれば、まだ一縷の希望はある!
だが目下の問題は、石棺全体の制御システムが深刻なダメージを受けていることだな。今の状態は非常に不安定なんだ。
思った通り……ここしばらく、研究所は大量の源石を使って石棺をかろうじて安定させていたんだろう。だが、源石の供給が途絶えた今、石棺は暴走寸前だ。
石棺からは今もなお、感染を引き起こすあの生物粉塵が絶えず漏れ出ていて、エネルギー出力も非常に不安定な状態だ!
仮に、石棺に秘められたエネルギーが制御不能の状態で放出されたら、ゼルグラードが丸ごと更地になるだけでは済まないかもしれない……
Mon3trさん! まだ石棺を停止させる手段は残されているんでしょうか?
今止めようと頑張っているところだ!
ケルシーが残してくれたスイッチに直接触れることができない。だから制御システムを構築し直すところから始めるしかないんだ……とにかく、もう少し時間が必要だ!
今のは……! 外にいる兵士たちが、まだここに押し入ろうとしているのでしょうか?
違う、建物自体が攻撃されてるんだ。
相手は第一軍だね。まさか、ここを丸ごと破壊するつもり?
くっ……! 向こう見ずな連中だ。後先を考えていないのか!?
建物全体が激しく揺れるにつれて、奇妙な姿をした無数の生物が石棺のコアから絶え間なく溢れ出てきた。
その生物たちも戸惑いと恐怖を感じているのか、この密閉された空間を四方八方へと逃げ惑っている。
あれは、あの夜に見た生物ではないようですが――
アーミヤ、Raidian! 気をつけろ! そいつらには絶対に触れるな!
くっ、私の手が空いていれば――
Mon3tr、あとどれくらい時間が必要なの?
おそらく……四十分ほどだ。
……わかった。
こっちは任せて。アーミヤとドクターは私が守るから。
ダイウたち、ちょっと頑張ってもらうね……
待ってください、外で何か物音が! 扉が突破されるかもしれません!
ドクターは私の後ろに! 私が警戒を――
ううん、この電気信号は――
ふぅ……間に合った! タイミングばっちりでしょ?
クロージャさん!?
アーミヤちゃん! みんななら絶対やれるって信じてたけど、こうして顔を見たらすっごく安心したよ〜!
ちょっとちょっと……何なの、この地面をうろうろ動き回ってる変なやつらは!?
気を付けて! これは危険な感染生物だから、絶対に触れないようにね!
じゃあ、どうすればいいの? こいつら爆発とかしない?
動く範囲を制限したいんだけど、なんとかできないかな? うちのサイガが持ってる弾薬だとちょっと足りなくて……
なーんだ、火力が足りないだけ? だったら話は早いね!
出番だよ、ZOOT!
号令と共に、クロージャの背後に整然と並んだドローンの編隊が飛び立ち、虫一匹も通さんばかりの壁を形成した。
この攻撃アルゴリズムは残酷すぎるから、実戦では使ってこなかったんだけど……やっと使う時が来たね。
搭載したばっかりの武器モジュール、早速試してみよう……
ZOOT、攻撃対象を識別して、精密殲滅開始!
クロージャ! どうやって入ってきたんだ?
あたしは天才ハッカー兼エンジニアなんだから、このくらい楽勝だよ! まあ、もちろん途中で会った人たちが助けてくれたおかげでもあるけど……
それに、グムちゃんが手に入れてくれた識別コードも役に立ったんだ。ドクター、あたしが壁の外で誰に会ったか、絶対に想像もつかないだろうね!
それにしても、やっぱり石棺のコアを見つけられたんだね。これであたしたち、やっと――
クロージャ! 手伝ってくれ!
はーい! 任せて!
Mon3trがあんなにピリピリしてるのは珍しいよね。一体どういう状況?
石棺が爆発しかけているんだ!!
……ええっ!?
……
Raidianさん……
私は……大丈夫……
どのくらい、時間が経ったかな……?
おおよそ一時間です。
二人を信じましょう……
Raidianとクロージャのドローンが共に築いた防衛線は、危険な感染生物を安全な距離に抑え込んでいた。
反対側では、Mon3trとクロージャが今もコンソールの前で作業に追われている。
誰もが口を閉ざし、まったく予想のつかない結果について尋ねようとはしなかった。
ドクター……私たちは……
ウソだ……
ウソだウソだ、あり得ないよ――
あんなに実験も研究も重ねてきたのに、石棺のことはもう十分理解したはずなのに、どうして……
クロージャはぶつぶつと呟き続けているが、石棺はその努力に応えることなく稼働し続けている。
ドクター……石棺は、もう限界だ。もはやプログラムを通じて停止させられるほどの猶予はない。
我々に残された最後の手段は、石棺が完全に暴走して破滅的な結果をもたらす前に……
……徹底的に破壊してしまうことしかない。
……
ドクター……決断を頼む。
もし……ケルシーがここにいたら、彼女もきっとその決断に賛成してくれるだろう。
Mon3trはなるべく平静を保った口調で、何よりも残酷な判断を下した。
もう時間はない。
「石棺」はもはや、仲間を連れ戻すという希望の拠り所ではなく、すべてを滅ぼしかねない脅威となっていた。
以前は、あなたたちの誰もが真摯な希望を抱いていた。しかし今では自らの手で決断を下し、最後に残されたわずかな可能性すらも放棄せざるを得なくなっていた。
何をためらっている?
あっ……
あなたにしては珍しいですね。何か気掛かりなことでも?
うむ……ウルサスに向かった皆が心配でな。
不確定な結果を待ち続けるのは、気分のいいものではない。
ドクターの前では、一度もそんな感情をあらわにしてはいなかったでしょうに。
士気に影響を与えたくなかったからな。しかし、だからといって本当に気にしておらぬわけではない。
そなたも妾と同じくらいの歳になれば、こうした別れに際してどう感じるのかがわかるだろう。
あまり嬉しくない言葉ですね……
ふぅ……これでエンジニア部の再建も完了って言っていいかな。本当に、一大プロジェクトだったね!
ドクターとアーミヤちゃんたちも、それにケルシー先生も、帰ってきたらみんなびっくりするでしょ!
確かに、大したものだな……
しかし、私も水を差すようなことは言いたくないが、ドクターの成功をそこまで確信しているのか?
もちろん。
ウサギちゃんと、ドクターのことを信じてる。それだけだよ。
それ以外に理由はない、と?
お互いを信じるのに理由が必要だったら、エリートオペレーターをやる意味なんてないでしょ?
それもそうだな。
では、皆のために帰還の宴の備えをせねばならぬな。
あくまで、平素の通りに。
その件については、以前話し合い、合意に至ったと思っていたのだが。
コーヒーを一杯求めるように、記憶を返してくれと他者に要求してはならない。他者の口から語られるものは、なんであれ客観的な事実とは言えないからな。
物事が思い通りに進まない苛立ちに耐えているのは、君だけではない。
いずれ君も、私の忍耐を理解してくれることだろう。
私から君の過去について語ることはない。だがそれ以外の要求であれば、必要なものはすべて提供しよう。
時々、わからなくなる……
君が気にかけているのか、嫌がらせをしているのかが。
君が思う以上に、私が君のことを気にかけているのは確かだ。
以前言ったように――君への憎しみや、その他の感情が自分の判断に影響を与えないように、私は己の感情を制御している。
だが、君が記憶を取り戻すか、自分自身を見つけ出すまでは、私が君を守り続ける。
その時が来て初めて、君がここに存在する意味について語ることが叶うだろう。
君はすでに、自分自身を見つけ出した。そうだろう?
そして君は、今や自らの責任と、己が貫こうとしている道を理解している。
「この大地の生命を守る」……
ずっと正しいと信じてきた選択を、やり遂げるんだ。
ロドスは誰かが欠けた程度で止まることはない……君たちは、違った未来を手にすることだろう。
Mon3tr……
君の判断の通りに――
……!
Mon3tr、今何かした?
いや……何もしていないぞ。
だったらなんで、ここのシステムに突然アクセス権の高いバックドアが出てきたの? っていうか、これが前からあったとしたら、どうしてあの研究員たちは気づかなかったんだろう?
待って、違う……これは単なる抜け穴じゃない! どうして石棺の操作システムの内部に、PRTSみたいな自律実行式のプログラムが存在してるの!?
すっごくゆっくりだけど……でも、これは間違いなく石棺を阻止してるよ!
まさか――
私もあれを直したいわ。あなたと同じようにね。
AMa-10は、私たち二人の期待を背負っていたのに加えて、私にとって極めて重要な記録も保存していたから。
もうやってる! でも、もうちょっとだけ時間が必要だよ!
五分……ううん、どうにかしてあと三分だけ稼いで! もう一度試してみるから!
だが、今の石棺は非常に危険だ。あとどれだけ保つか、私にもわからないぞ!
どうすれば……石棺のエネルギーを抑え込むことで、安定を図ることはできませんか?
アーミヤ!?
そんなことは不可能だ! いくら君でも、単独で石棺のエネルギー出力に対抗できるはずがない!
やってみなければ……わかりません。
それに、感じるんです。黒い王冠が私の呼びかけに応えてくれているのを……だから、私はできると信じています。
テレジアさん……手を貸していただけるんですか?
いいえ……アーミヤ。
あなたの要求は、テレジアが私に設定した基本命令に――
いかなる時でも、あなたの安全を最優先に確保せよ、という命令に反しているわ。
ですが、あなたは「後悔することがないように」ともおっしゃいましたよね。
アーミヤ、本当にやるつもりなの?
今度こそ……全力を尽くしたいんです。
もうこれ以上、身近な人を失いたくありませんから……
……
古の巨大構造体がおぞましい唸り声を上げる。近くに立っているだけで、あなたは五臓六腑がその振動で震えるのを感じていた。
この機械の奥底に、どれほど莫大なエネルギーが内包されているのか、まるで想像もつかない。
アーミヤは石棺に手を伸ばし、彼女の指先から黒いアーツが流れ出す。その瞬間、それは間違いなく石棺の猛り狂う力を抑え込み、そのコアを鎮めることに成功した。
うっ――!!
アーミヤ!
大丈夫です……心配はいりません……
あの日……ケルシー先生が私の前に立ち、庇ってくださったことを私は忘れません……
いつだって、皆さんが私の前に立って守ってくれていたんです……
今度こそ……絶対に諦めません――
私なら、できます――!
アーミヤの華奢な体から、とてつもなく強大な力が放たれるのを、あなたは再び目の当たりにした。
あなたは手を伸ばし、彼女の体を支える。同時に、激しく渦巻く感情がはっきりと伝わってきた。それこそが、アーミヤの力の源だった。
揺るぎない決意、数え切れない心残り、離別への恐れ……そして、今や記憶の中にしか存在しない温もりへの、断ち切れぬ未練。
あなたたちは共に果てしなく長い道のりを歩み、多くのものを失ってきた。
あなたは懸命にアーミヤの肩を支え、いつものように彼女の感情をなだめて、その苦痛を分かち合おうとした……だが、その力は、そして激しい感情は、まるで尽きることがないように思えた。
その一瞬、あなたは確かに聞いた。何かの器物がひび割れ、砕け散るような音を。
もうすぐ……ううん、もうできた!
アーミヤちゃん、もう大丈夫だよ!
止まったよ、だけど――
ここは……どこだろうか?