起死回生 3-5・戦闘後
コール
みなさん、熱くなってはいけません!
一度退いて陣形を立て直しましょう!
このままでは、こちらの部隊が分断されてしまいます!
もし、今向こうに増援が来てしまったら、何が起きるかは想像に難くありません。
そもそも、彼らの目的は私たちではないようですし……
みなさんの安全を最優先として行動しましょう!
狙撃オペレーターの方たちは、撤退していくレユニオンへの攻撃を中断してください!
その上で、ホシグマさんの援護をお願いします!
やれやれ、手間を取らせてくれるな!
ふふっ。あんたこそ、そんなに頑張ってくれちゃうなんてねえ。
だけど、それもいつまで持つかしら?
フッ、人の心配をしている場合か?
――チェン隊長、お願いします!
了解! ――奴を包囲しろ!
ふうん、ここで近衛局様のご到着ってわけね。
そこの貴様、武器を置け。
あら、チェン隊長~。またお目にかかれて嬉しいわ~。
口先だけでへつらったところで、今更貴様を許しはしない。
龍門へのこれまでの行いを、倍にして返してやろう。
きゃ~、隊長さんこわ~い。
でも、ごめんなさいね? 今回の目的はあんたじゃないの。
ほら、アーミヤ。キャッチしてちょうだい。
私……ですか? うわ、っと……これは……携帯電話……?
そうよ。誰かさんがあんたとお喋りしたいんですって。
……えっ……?
さーてと、仕事は済んだし……
せっかくだから、全員にプレゼントでもして帰りましょうか。
――それじゃあね。また会いましょう?
まずい、伏せろ!
ッ、こんな距離から爆弾を――
! 違う、これは閃光弾です!
みなさん、騙されないで――
――ダメだ、間に合わん。
チッ、逃げ足の速い奴め……
こちらが態勢を立て直す前に離脱するとは。
アーミヤ、先ほど持たされたものに気をつけろ。爆発物の可能性が……
……いえ。これは、普通の携帯電話のようです。
ただ……ひょっとすると……
――――
もしもし……?
————
……もしもし……
アーミヤ……?
ミーシャさん……! 今、どこにいるんですか?
……そっか。アーミヤ、なんだね……
……
――重傷者を優先して……この人に輸血を! 急いで!!
――くそっ……なんでだよ……! あいつらだって、感染者のくせに……!
ロドスの奴らは、どうしてこんなことしやがるんだ!?
あいつらには最初から、私たちを助けるつもりなんてなかったのよ……! ああ……もう逃げ場なんてないんだわ……!
――ダメ! 死なないで……! お願い、目を開けて! 一緒に帰ろうって約束したでしょ……!
……う、ぅっ……お兄ちゃん……こんなの、やだよ……
……この人たちの声が、聞こえる?
……
レユニオンの人たちの声……ですね?
そう。……私ね、思い出したことがあるんだ。
ううん、正確に言えば、忘れたことなんて一度もなかった。ただ……思い出したくなかっただけ。
――その時、私は弟が連れて行かれるところをこの目で見たの。……あの子は泣きながら私を呼んでたのに、私はそこから目を背けて――
自分の部屋に逃げ込んだ。
……次に会えた時には、あの子はすっかり変わっちゃってて……
それでも、私には家族として接してくれたのに……私は、怖くなってまた逃げちゃった。
……でもね。私、わかったんだ。
確かに私は、レユニオンに家を壊されて、お父さんまで奪われたけど……
それは……きっと、私たちの自業自得だったんだよ。
だって、この人たちは、自分たちを迫害した人たちに、感染者の受けた痛みと同じものを味わわせようとしてるだけだから。
結果的に、私も今は感染者だし……
……ようやく、罪を償う時が来たんだと思うの。
っ! ミーシャさん、早まってはいけません!
これまで、人々が感染者をどう扱ってきたとしても、今あなたが変われば――
意味ないよ。
私に何が変えられるっていうの?
見て見ぬふりをしてきたのは、ほかの人たちと同じなんだよ?
……私もね、鉱石病になってから、前よりちゃんと理解できるようになったんだ。
――皆が感染者にしてきたことを、今度は感染者がやり返すべき時なんだ、って……
それが、当然の報いだと思うから。
そんな……
……だから、私が苦しんでるのだって、自分で蒔いた種なんだよ。
こんな思いをするのも、全部……全部、自分のせい……
だけど――どうしてあの子が、あんな目に遭わなくちゃいけなかったの?
弟は、何も悪いことなんかしてなかったのに!
なのに突然、感染が発覚したとか言われて……!
……その時は、あの子だってまだ小さかったんだよ? ……私に、宿題を手伝ってほしいなんて……言い始めたくらいの、頃で……
私が……私が、あの子を守ってあげてれば……!!
ミーシャさん、落ち着いてください!
罪のない人々を傷つけたのは、あなたではないはずです! そもそも何一つとして、あなたのせいなんかじゃ――
――ッ、「罪のない人」って何なの!? 誰でも、最初は罪なんかなかった……! 間違ってなんかなかったはずでしょ!?
――
間違ってたのは、「感染者」の立場だけ……!
復讐が復讐を呼んで、憎しみ合う連鎖が続いていって……こんなことになったのは、一体誰のせいだっていうの……!?
もし、ウルサスが感染者を家畜同然に扱ったりしなければ……
誰もウルサスを恨んだりなんかしなかったはずなのに!
どうして、感染者は皆、こんな目に遭わなきゃいけないの!?
……ミーシャさん……
……戻ってきて、くれませんか。スカルシュレッダーはすでに命を落としていますし、私たちは――
――
……私の答えは、もう決まってるんだ。
私は、感染者の味方になる。
今は自分だって、その内の一人だしね。
っ、ですが――
――アーミヤ。あなたも、同じ病気を抱えている以上……
きっと、わかってくれると思ってる。
はい。それは、もちろんです。私も、そしてロドスのみなさんも……あなたの思いは理解できます。
けれど、非感染者から感染者へと立場だけを変えたところで、何も変えることはできないんです!
だから、私たちと行きましょう。……どうかそこで待っていてください。すぐ迎えに行きますので!
……ダメ。来ないで。
――っ……ミーシャさん、どうして――
本当は……アーミヤが正しいんだと思う。……私はただ……罪悪感から、こうしようとしてるだけなんだろうね。……私は、弱い人間だから。
だけど、もう決めたんだ。
どんなに小さな一歩でもいいから、踏み出してみる、って。
……ごめんね。本当にごめん……
でも……レユニオンだって……
あの人たちだって、皆同じ感染者なんだよ。
……だから――さよなら、アーミヤ。
……ミーシャさん? そんな……ミーシャさん!!
…………