急転直下 4-3・戦闘後
人工的冷却
急げ、素早く行動しろ!
あの人たち、どうして……
(小声)静かに。
(小声)は、はい……!
(小声)あいつら、まだいるのか?
(小声)……ええ。
(小声)何か探しているみたい――
(小声)――! 隠れて!
……?
なんだ、気のせいか。
(小声)……厄介だな。狙撃はできないのか?
(小声)ちょっと遠すぎるわね……
(小声)あの人たちが現れたあとは、爆発音も止まってるし……撃てばその音が目立っちゃうのも難点だわ。
(小声)向こうは三人で散らばってるから、一度に全員仕留めきるのも難しいでしょうし。
(小声)おまけに、あの動き……ほかのレユニオンとは明らかに違うわよね。
(小声)確かに……あの人たちだけ重装備ですしね。
(小声)ええ。こうなると、軽率に動いて一人でも逃せば、大量に増援を呼ばれて、もっと危険な状況に陥るのは目に見えてるわ。
(小声)その上、向こうに探知型のアーツを使える人員がいた場合は……
(小声)一度狙撃を試みただけで、こちらの位置を把握される可能性もあるしね。
(小声)術師らしい格好の人がいるのは確認してるし……何かテストをしている様子なのも気になるわ。
(小声)なるほど。結論として、今は何もできないということか。数の上では3対3でも、包囲されているようなものだしな。
(小声)ええ。……最悪の事態ね。
(小声)まるで、追っていたはずの獲物に、気付けば追い詰められていたような……嫌な感じだわ。
(小声)……見て。あの人たち、誰かに連絡しているみたい……
(小声)ここからでは、内容まで聞き取れそうにないな。私が行ってこよう。
(小声)ダメよ。周りが静かすぎる……今動くのは危険だわ。
(小声)そもそも、向こうの実力もわからない状況だしね。
(小声)耳ざとい相手に気付かれでもしたら――
(小声)……? あの人たち、何を待ってるのかしら?
(小声)……何か……妙な感じがするわね。
(小声)どこか、違和感があるような……
(小声)あなたもそう思わない?
(小声)た……多分……
(小声)また、温度が下がったせいだと思います……
(小声)さっきから……すごく、寒くて……
(小声)……! もしかして、あの人たちが何かしたのかしら?
(小声)……って、ジェシカ……? どうしたの? 急に指をくわえたりして……
(小声)寒さで身体が震えても、歯が鳴らないようにしているんだろう。
(小声)今必要かどうかはさておき、この手の心得があること自体は見所がある。大した子供だ。
(小声)大した子供、って……私からすれば、あなたもまだまだ子供なんだけど。
(小声)……はぁ。
(小声)そういうのは止してくれ。
……温度が元に戻ってきたわね。あの三人もこの場を離れたようだし……
それにしても、さっきのテスト……やっぱり、気温の変化と関係している気がするわ。
――音もなく、冷気と共に現れて、熱を奪うと静かに去って行く。そうして、あとに残されるのは、暗がりで震える人々だけ……
……こうして言葉にすると、やっぱり「スノーデビル」の噂を思い出しちゃうわね。
そうだな。まだ推測の域を出ない話ではあるが。
もしかすると、奴らがその「スノーデビル」なのかもしれない。
……見つけた。この壁、まだ凍り付いているな。
だが、見ての通り――
黒い源石が、隅に埋め込まれてる……
冷気の元はここと考えて良さそうね。
ああ。こうして、壁面に霜が降りていることから見ても――
この源石が、辺り一帯の温度を下げている大本の原因だろうな。
――これは、傭兵時代に耳にした話だが……
ウルサスの西北部には、感染者で構成された遊撃隊がいて、そいつらはずっと政府と戦い続けているそうだ。
聞くところによると、その遊撃隊の中には、要塞を思わせるほどの怪物がいるという噂でな。
なんでも、そいつの歩みを止められるものはなく――
相対すれば、盾は砕かれ、武器は折られるという話だ。
挙げ句、怪物が去ったあとには、ただの更地が広がるばかりで、命あるものなど残らないと聞いている。
加えて、その遊撃隊には――
厳しい冬を体現するような、とある小隊が所属しているとかで、そいつらの噂も色々と耳にしたものだ。
たとえば、その小隊が通った場所は、すべてが氷に覆われるだとか……
そうして凍り付いた建物は、崩れ落ちて粉と化したとか……
戦場にあった塹壕の中は、凍り付いたウルサス兵で埋め尽くされていたとかな。
その話をしたのって、つまりは……
ああ。思うに、先ほどの連中が――
件の「スノーデビル小隊」だろうな。
だが、何はともあれ今は前進しよう。レユニオンの拠点は、恐らくこの近くにあるはずだ。
……!
どうしたの、ジェシカ。
……何かのにおいがするんです。
なんというか、焦げ臭いような……