怒号光明 R8-4・戦闘後
一触即滅の「火種」
それで、その人たちを追い払ったの?
ああ。
私は一緒に行かなくて正解だったみたいね。人が焼けるにおい……あんなものをまた嗅いだら、きっと吐いてしまうもの。
アリーナ、無理して私と一緒にいようとしなくていいんだ。
ううん……私は自分からあなたについていくって言い出したのよ。あなたと一緒に行きたいの。
ああ。私がお前たち感染者たちを守り抜いてみせるさ。
違うの。私は守ってほしいなんて――
わかってるさ。アリーナがいないと、物資や情報の収集もままならないからな。
それより、誰と連絡を取ってたの? よかったら教えてくれない?
……
私がウルサスのスパイじゃないかって疑っているの?
違う、アリーナをこんなことに巻き込みたくないだけだ。
感染者になった時点で、これ以上悪くなることなんてないわ。
……連絡を取っていたのは、他の都市の感染者だ。
彼らから都市の動向を探り、凍原で苦労している感染者をなんとか助けたいと思っている。
すごいことを……しているのね。
その正義感は一体どこから来ているの? 誰かに教わったもの?
違う。
私が受けた教育は、邪悪で狂っていた。統治の傲慢さと権力の恐怖に満ちていた。
だからそいつを反面教師にした。奴らの偽善的な仮面を剥ぎ取り、力を誇示するためだけの貴族都市を一つ一つ破壊して、この雪原に生きる全ての人に真実を伝えたい……
そして、私たちは自らの手で自身の運命を決めるのさ。
この大地を切り拓き、自分たちの楽園を作り上げる。邪魔するものは何だろうと排除する。
そもそもこの大地は感染者のものでもある……大地の全ては、元よりこの地に生きるもの全員に与えられたものだ。
……もっと現実を見て、タルラ。その考えは手の届かない話よ。
タルラ、あなたがそんなことをすれば、この村はもう本当におしまいよ。帰る場所を失って、監視隊に追われ続ける身になってしまうわ。
私が何もしなくても、あの村は荒廃の一途をたどるだけだ。
誰もがあなたのように戦士になれるわけじゃないわ。たとえ痩せた土地でも老人、子供、病人にとっては生きていくために必要なの。捨て去ることなんてできないのよ。
わかっている、アリーナ。だからこそ新たな土地を見つけなければならない。
さぁ、こっちだアリーナ。今晩は泊まる場所があるんだ。
はぁ……
泊めていただいて感謝する。
とんでもない! 君がいなかったら、みんな死んでいたところだ。まあ、今でも死人同然の生活だがな。
最初はきつく当たって悪かったな。しかも武器まで向けた。こんな腑抜けを許してくれ。
もてなすほどの物は残ってないが、麦粥が少しある。食べてくれ。
ありがとうございます。でも、大丈夫です。
いや、どうせ余り物だ。持ってあと数日、大して変わらないよ。
平和に暮らせる村を作ろうとこんなに遠くまで来てみたが……意味なんてなかった。
逃げ切れるわけがないんだ。ウルサスは広いと言っても監視官はあちこちにいるし、他に受け入れてくれる場所もない……俺たちに行くあてなんてないのさ。
それなら、私と行かないか?
……行くってどこに? 今からか?
今でなくてもいい。
考えが決まれば――もしくは本当に八方塞がりになって、それでも生きていきたいなら、私か仲間に連絡をくれ。
凍原での暮らしは……厳しさを増す一方だ。
私たちにはまだ行ける場所が、未開の地がある。田畑を耕して収穫が見込める土地を見つければいい。それに、仲間もたくさんいる。それぞれの村で助け合いながら商売をすれば、収入も得られる。
いずれにしても、生き延びることができる。
でも、監視隊がまた来たらどうするんだ?
――奴らを打ち負かせばいい。
何だって?
……冗談だよな?
私にはできるし、お前たちにもできる。あの時、私に武器を向けたことも決して間違いではない。
略奪者は、団結して追い払うまで。感染者にだってその力はある。
少しずつでいい。私たち感染者も自分の人生を取り戻すんだ。
まず手始めに必要なのはパン。それから……火だ。