怒号光明 M8-3・幕間
傍らに潜む「死亡」
中央エリア
た、助けてくれ……!
俺たちもレユニオンだぞ。なのになぜこんなことを? サルカズは恩を仇で返すのか!?
……どうしたの?
仲間割れです。防衛拠点を守っていたサルカズが、レユニオンの連中を虐殺しているようですね……
隊長?
助けなきゃ。
隊長が行くんですか?
うん、私が行く。
うっ……ゴフッ! なぜ……なぜなんだ!?
レユニオンがなぜこんなことに……団結するんじゃなかったのか? 俺たちは、皆で一つの家族じゃないのか!?
……
さらばだ――
やめて。
!!
重量級の投擲武器だ、気をつけろ!
!?
巨大な武器が宙に浮いている……
そこのフェリーン、お前がやったのか? お前は術師だな?
武器を下ろして。
もう大丈夫、早く行って。
行くってどこに? 隊の仲間も同郷の者も……みんなもう……
シン、手伝ってあげて。
了解。……さぁ、行こう。サルカズの奴らは見境がないな。
もう一度言うよ、サルカズ。武器を下ろして。
まさか恐ろしい武器で脅せば、俺たちが言う事を聞くとでも思っているのか。
甘いな。
それは殺されたいってこと?
俺たちに選択肢は残されていない。
自分の同胞や仲間を攻撃し、傷つけて――
いつから感染者が同胞になったんだ? 俺たちの同胞はサルカズだけだ。
レユニオンに入った時には、きっとそんなこと言ってなかった。
仲間を裏切り、傷つけ、他人の感情を踏みにじる……
クズだね。
あの武器は危険だ! 避けろ!
待ってください、ロスモンティスさん!
あっ、アーミヤ。
Raidianさんから報告がありました。ケルシー先生から連絡が届いて、特殊感染者に注意せよとのことです……
彼らは龍門の特殊感染者の変異体かもしれません。他の人に感染する可能性もあります!
サルカズの戦士の皆さん、聞いてください!
一部の……サルカズの重篤な感染者が、他の感染者を巻き込もうとしています!
このエリアにはまだ感染者の生き残りがいます。しかもその人たちは民間人です! 彼らを今いる場所から退避させなければ……
私たちはここを通れなくても構いません! とにかく人員を割いて他の感染者の安全を確保してほしいんです!
無駄だよ。この人たちは言うことを聞かない。良心がないもん。
……
……奴らなら見た。俺たちはあそこを通ってきたんだからな。
後戻りなどできない。もし奴らがここに来たら……殺るしかない。サルカズの感染者をこれ以上増やさない為にもな。
あなたも感染するかもしれないよ。
構わん。
あんな風になりたいの? アーツで操られる化け物になるんだよ、それでもいいの?
化け物扱いには慣れている。
……ああ……そっか。
この都市はもう終わりだ。そして俺たちも、遅かれ早かれああなる……だが、ここでタルラの言いつけ通りにあいつらを消せば、生き残れるかもしれない。
でもタルラが生きてたら、どのみちこの都市ごとみんな消えてなくなるよ。
もしWが失敗したんなら、どうせお前たちにだって無理だ。
戦争ってやつはな、勝ち馬に乗れなきゃ死ぬしかないんだ。
でも他の感染者を攻撃するというのなら、あなたはここで死ぬことになる。
死が何だっていうんだ? メフィストの家畜になることだって、それが何だっていうんだ……?
メフィストだって化け物だ。他の感染者を殺すのは、俺たちがみんな化け物だからだ。
サルカズ人の同胞には、これ以上苦しんで欲しくない……だがな、苦しみが何だっていうんだ?
どこか余所の場所に行ったからって、そこで生きていく事を認めてもらえるのか?
お前は感染者だ、自分の末路がわからないわけじゃあるまい?
お前がその小さな部隊を離れれば、そこにあるのは死だ。
蔑まれ、鞭で打たれ、首を絞められた挙句、吊るされて終わりだ。
あるいは都市を追い出されて、餓死するか獣に食われるかだ。
どのみちろくに生きていけやしない。
感染者に人としての尊厳などないんだよ。
……あなたに何がわかるの?
あの……
教えてください。あなたはタルラのために戦っているわけではないのでしょう?
奴は……強い。だから奴についていけば、より多くが生き残れる可能性が高いってだけだ。
だから、そのために何人殺そうが俺たちは気に掛けたりしない。
今すぐ消えて。次に会ったら殺すから。
いや、フェリーン。ここを通りたければ、俺たちを殺すんだな……
お前に俺たちが殺せるならな。俺たちだって同胞があんな風になるのは見たくないさ……ハハッ……
本当に救いようのない人たち。
……な……何だこの音は?
これは……?
いけません……!
私たちの現在地は司令塔が出入口を塞ぐために用いる封鎖エリアの付近です……司令塔のレユニオンは封鎖層全体を上昇させて、司令塔への入り口を塞ぐつもりかもしれません!
このままじゃ間に合わなくなります!
……
サルカズ。これが最後のチャンスだよ。ボロボロにされたくないのなら、道を開けて。
……ふっ、ふははっ! いいぞやってみろ!
アーミヤ、もうやるしかない。いいよね?
……
私がやります。
ふん……コータス。お前に何ができる?
何だそれは……? 黒い線……が――――
ハァ、ハァ……ううっ……
状況は……どうですか?
意識を失ったサルカズたちは、全て制圧完了しました。
わ、わかりました。ええっと……他に感染者は……いますか?
偵察オペレーターの調査結果では、街は感染者だらけです。しかもその多くは、閉じ込められていた受動感染者で、かなり悲惨な状態に置かれているようです。
封鎖層への……通路は……どうですか?
ここから工事用の通路を抜ければ、構造制御エリアに直接入れると思います。内部にある遠隔操作パネルをハッキングすれば、相手の動きを封じられるかと。
他の正面通路については、偵察オペレーターによると、少なくとも四箇所の地点で遊撃隊とレユニオンが交戦しているようです……
戦況は激しくなっているようですね……
遊撃隊は強いですが、レユニオンには地の利があるうえ、サルカズの傭兵も控えているので、そう簡単には突破できないと思います。
心配は要りませんよ、アーミヤさん、隊長。我々エンジニア小隊が潜入して、封鎖層全体のエネルギー供給を遮断します。
できるの?
やってみせます。
でもリスクが大きすぎます。
中枢区画に入ること自体、まさにリスクそのものですよ。
本当に大丈夫?
ええ、早速出発します。
ちょ、ちょっと待って!
気をつけて。うん……気をつけてね。
私たちはエリートオペレーターのロスモンティスさん率いる精鋭小隊ですよ? ご安心を!
……どうかご自身の安全を第一に考えてくださいね。
それを言うなら、アーミヤさんだってさっきあんなアーツを使ってたじゃないですか!
あ、あれは……
エンジニア小隊、総員出発! 急げ!
……行っちゃった。
アーミヤ、ここであなたに体力を消耗させるわけにはいかない……向こうは私が対処する。
はい……そうすれば、少しでもロスモンティスさんが人を傷つけずに済みますね。
ロドスは私のやり方に反対しているの?
いいえ。ただ、本当は私たちだってこんな事はしたくないんです。
それに私が消耗するのは体力だけです。でもロスモンティスさん、あなたの場合は……精神を消耗します。
そんなの気にならないけど。
でも……私たちが気にするんです。
アーミヤさん! この人がアーミヤさんと話したいそうです。
あ、あなたは……
……レユニオンの、感染者さん。そう呼んで構いませんか?
好きにしてくれ、もうそんなことどうでもいい。俺たちは……もう終わりだ。だからお前たちの行き先を教えてくれ。
そこへ俺たちも……連れていってほしい。俺たちにはもう居場所なんてない。同胞たちとは戦いたくないが、サルカズの奴らも遊撃隊も俺たちを殺すつもりだろう。
どうしてそう思うんですか?
奴らは誰であろうと殺すんだよ。そういう話を聞いたんだ! 他の感染者を殺すのは、何か間違ったことをしたからだって!
……果たして全員がそうでしょうか? そういう人もいれば、違う考えの人もいるはずです。
聞いた話ではなく、実際に自分の目と耳で確かめなければ、真実はわかりません。
ですが、戻って確かめろとは言いません。あなたたちが彼らを恐れている以上、彼らのやり方に馴染むことは難しいでしょうから。
だから……だからこそ、お前たちがどこに行くか聞きたいんだ。
――中心部の司令塔に行くつもりです。
……気でも狂ったのか?
いえ。
この混乱を止めるには、司令塔に行くしかないんです。
一つお願いを聞いてもらえませんか、感染者さん。
人殺しならごめんだ。
違います。あなたたちに……このエリアの感染者たちを守ってほしいんです。
ですが気をつけてください。彼らはあなたたちを……その制服を憎んでいるかもしれません。
ならどうすればいい?
選択肢は二つあります。一つは制服を脱いで、レユニオンとは別の道を歩む……
もう一つは、その制服を着たまま、本当にやるべきことをやる。
簡単な選択肢と難しい選択肢です。でも私は……あなたたち自身でどちらを選ぶか決めるべきだと思います。
司令塔入り口
クソッ! あの腰抜けどもめ、封鎖層を起動して司令塔の入り口を塞ぐつもりだ!
まだ突破できないのか?
サルカズの傭兵たちが封鎖エリア全体の入り口を守っている! おまけに他の感染者の邪魔も入るし、集中できる状況じゃない!
もう一度言ってみろ。俺にロドスと協力しろだと?
その通りだ!
彼らは、どんなに陳腐なルールでも守るような人たちだ。
ロドスが信用できないというのなら、もうこの都市には信用できる人なんて残ってないぞ。
大尉を殺した者たちが信用できると?
俺たちがここで死んだら、誰がパトリオットの意志を継ぐんだ?
俺たちには力が、ロドスには知識がある。少なくともケルシーは、事情に精通している。大尉と同じぐらいにな。お前も見ただろ? あの大尉でさえ彼女を認めていた!
封鎖層はすでに上昇を始めている。さぁ、決断しろ。残された時間は多くないぞ!
――以上が大まかな報告です。彼らにはきっちり話を通しました。ですからアーミヤさん……
あなたに同意してほしいわけではありません。ただ、少しでも状況が良くなればと思って。
これが正しいことなのか……よくわかりません。でも、俺は――
皆の被害を抑えたいんです……
大丈夫ですよ、Guardさん。あなたの提案は理にかなっていると思います。ただ……私たちは盾兵部隊と同じような行動をとることはできません。
私たちには感染者を処分する権利はありませんし、あのような……懲罰的な手段も取りたくありません。
彼らはもうすぐ到着するんですよね?
はい、恐らく。
……アーミヤさん、俺ますますわからなくなってきました。
……
――フェリーン。お前たちのリーダーはどこだ?
今こんな時に、復讐するつもり?
少しアーツが達者だからとなめた口を聞くな、白猫!
あなたのことは嫌い。
商人の下っ端が、いまさら感染者の英雄気取りか?
私たちをバカにしてるの?
……やめてください。
あなたがロドスのメンバーにそんなことを言う権利はありません。
……魔王か。
お前はあのサルカズに命令を下せるのか?
……できませんし、試すつもりもありません。それと、そんな風に呼ばないでください。私はロドスの一員に過ぎません。ですからどんな種族、権力とも関係のない立場です。
ならば話は簡単だ。お前と奴らも特に親しい間柄ではないということだな。
ここに来たのは俺たちと一緒に司令塔を破壊しに行くためだろう?
……
なぜそれほど警戒する? こんなに譲歩してやってるというのに。
他の遊撃隊の戦士はまだ俺の動きを知らない。だがお前もあいつらと一緒で、この街にいるタルラとその恐ろしい計画に囚われた奴隷たちを解放したいのだろう?
それなら、感染者の未来を取り戻すためにも、今一度この都市に希望の火を灯そうじゃないか!
お前たちが本当に感染者のために戦っているというなら、応えられるはずだ。
さぁ答えろ、ロドスよ!