怒号光明EG-5・幕間燃焼の断章5
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ウルサスサーミ極東炎カジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグカズデルシラクーザレム・ビリトンサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア

名前

怒号光明 EG-5・幕間

燃焼の断章5

???

あぁ。

失礼ですが、貴方がドクター殿ですね?

ドクター

12F

まさか私のことを覚えておられるとは。

どこかで私を見かけたことが? それとも、私の資料をご覧になられたのでしょうか?

???

あぁ、申し訳ございません。直接お会いするのは初めてでしたね。自己紹介をさせてください。

お初にお目に掛かりますドクター殿、私は12Fと申します。ごく普通のオペレーターですので、お会いする機会にはあまり恵まれませんでした。

ドクター

12F

いえいえ。私を知っていくうちに、私に嫌気が差すかもしれませんから。

少しくらいかしこまっていた方が、どちらにとっても良いのです。さらに近づくか、一歩引くか、その余地が生まれますからね。

12F

ドクター殿は寡黙な方だと伺っておりますので、無理にお話いただくつもりはございません。

私たちが歩んできた道はあまりにも違います。性格も大きく異なるでしょう。

12F

対外的な場面では、礼儀正しく振る舞うのが習慣なんです。習慣化した話し方を変えるのは容易ではありません。

礼を欠いた言葉遣いが原因で、暴力沙汰になるような場面も、度々目にしてきました……我々が粗暴なものを避ける理由は、単に無益なことを防ぎたいからというだけなのです。

12F

今回は非常に厳しい戦いでしたが……ドクター殿は本当に最後までやり抜いたのですね。

しかし、このような戦いはただ人々を恐怖させるだけにすぎない、そうは思いませんか?

ドクター

12F

そうお尋ねになるのなら……

正直にお答え致しましょう……はい、確かに小隊についてここまで来ましたが、恐ろしく感じています。

荒野において、死など取るに足らないもの。これはほぼ全ての人の共通の認識となっています。

生き残りたい。荒野で命を落としたくない。そう思ったからこそ、私たちは移動都市を作り上げたのだと思います。

しかし、そんな移動都市群を繰り返し襲う災難が証明しています。何かの脅威から、幸運にも逃げ延びられたと思ったその瞬間に、私たちは自ら、次の脅威を作り出しているのだと……

チェルノボーグの民はこのような事態を想像できたでしょうか? いいえ、思いも寄らなかったはずです。怯えながらの暮らしなど、決して良いものではありません。

こんな結果はあまりにも酷すぎます。自分がこのような未来を予見しながら日々を過ごすなど、想像もできません。

しかし、気づかぬうちにこれらの全てが彼らに降り注いだのです。私たちが中枢区画を止めた今、チェルノボーグでは何が起きているのでしょう?

今後私たちを待ち受けるであろう全てが、恐ろしくてなりません。

12F

多くは語らないおつもりのようですので、これ以上問うような真似も控えさせていただきます。

12F

何に慣れてしまわれたのですか?

恐怖にですか、それとも……戦いにですか?

いずれにせよ、やりきれませんね。

ご安心を。ドクター殿に偏見を持っているわけではありません……

ドクター殿が指しておられるのは、やはり後者の方でしょう。

戦いに慣れた……そんな類いの言葉を残す戦士は数多くいます。

ドクター殿は、戦士ではありませんが、戦士たちと生死を共にする日常に慣れてしまったのでしょう。そして、戦いに何かしらの理想を抱いているのではありませんか?

あるいは、そのような衝突など、ドクター殿にとっては目的を果たすための手段にすぎないのでしょうか……もしくは、戦いの血なまぐささや栄光に……興奮するのでしょうか?

申し訳ありません、ドクター殿。少し、過ぎた言葉でした。

ただ、私の個人的な願いとしては、ドクター殿には戦場から距離を置いてほしいのです。たしかに戦地の指揮官としては、ケルシー先生にも引けをとらぬほどの実力をお持ちですが――

ですが、まさにケルシー先生のように、ドクター殿が本業と本来の暮らしに今以上のエネルギーを注げば、人々に更なる利益をもたらすことが出来るはずです。

とはいえ、物事は思い通りにはいかないものです。美しい家庭が壊され、活力に満ちた者が命を失い、純粋だったはずの子供が武器を取る……そのような事態を、私たちは止めることはできません。

恐怖に慣れるというのは、おそらく今の私のような状態を指すのではないでしょうか。

私とドクター殿が、同じ種類の人間だとはどうしても思えません。ドクター殿が現れて以降、貴方が参加した戦いは私の知る限り、基本的に全て勝利を収めています。

ですが、負けて何かを失うことが恐くはありませんか? 逆に勝利し続けることに恐怖を覚えることはないですか? 

私は、そもそも戦いが嫌いなのです。できることなら、どこまでも避け続けたいと思っています。

もしかしたら私は、ドクター殿とは真逆なのかもしれませんね……私は、勝利にすら恐怖するのですから。

ドクター

12F

——

もうこんな時間ですね。私たちの小隊も撤退する準備をしなければなりません。

どうか安全に気を配ってください。今日という日が素晴らしい一日でありますように。

12F

ドクター殿……私は、貴方という人をもっと知りたかったのです。ですが、ここでお会いできて、どうにかその答えが出せそうです。

かねてよりドクター殿と親しかった者を除けば、私のようにロドスに加入してから日が浅い者の中にも、貴方に興味を抱いている人間は多いのですよ。

アーミヤ殿についての認識は、誰もが似たり寄ったりのはずです。あの小さな身体の底に潜む強固な意志が、彼女を支えているのだと皆が知っています……

ケルシー先生に対するイメージは、それぞれ違います。ですが私には彼女が理解できます。彼女の行動には、全て道理があるのです。衝動的な行動や、私情を挟むことはありません。

これは常人にはなかなかできないことでしょう。

ですが貴方は……

貴方はどうでしょう?

ロドスに戻ってそれほど時間も経っていないのに……いえ、むしろ戻る前からその名はロドス中に広まっていたのです。

ですが、私たち新参者はドクター殿のことを知りませんでした……一体どんな人なのだろう? 何をもたらしてくれるのだろうか? そんなふうに思っていました。

ドクター殿が到着する前、ケルシー先生が全員の個人端末に通知を送りました。貴方が今後、ロドス司令部の重要な一員になると……

同じような人事通達は少なくありませんが、それでも私はその短い文章に含まれた意図を読み取りました――

――一部の者にとって、貴方は全く見知らぬ存在。少なくともあの時はそうでした。

……貴方にどんな過去があるのか、そして貴方がどんな未来を作るのか、私たちには知る由もありませんでした。

ロドスは私たちをどこへ導いてくれるのでしょうか? この旅路において、きっと貴方は重要な役割を担うはずです。多くの者がそう思っています。

ですが、貴方自身にとってはどうでしょう? あなたは、これらの全てが……自分とは無関係だと感じますか? 貴方は記憶を失っています。この大地も貴方に多くの事実を隠しているのです。

ドクター殿、私の個人的な経験談に耳をお貸しいただけますか? 真に受けなくとも、ただ聴いてくれるだけでいいのです。

「目を覚ましてからというもの、自分には選択する権利などない。誰かの敷いたレールをただ歩いてきた」――貴方はそう感じているのかもしれません。

私の経験から言わせていただけるなら、この大地に投げ込まれたその時から、私はずっとそう感じていました。私に選択肢はなく、この大地で生きていくしかないのだと。

運命を己の力で変えられると考えている偉人を除き、私たちのような凡人は――このように表現することをお許しください。私たちのような凡人は常に誰かの敷いたレールの上を歩んでいるのだと。

ですが、本当に私たちには選択の余地がないのでしょうか?

私は自ら志願して、このチェルノボーグ中枢区画の任務に参加しました。

危険であることはわかっていました。自分の信条に合わないということも……大地を揺るがすような大それたことをするより、私はただ静かに生きていたいだけですから。

自分が何の役にも立てないと言うのも理解していました。腕の立つオペレーターに比べたら、私など足を引っ張らないようにするので精一杯です。

それでも私は志願しました。後になって悩んだり、他人にその理由を説明したりする必要は微塵もありませんでした。

人間は、行動をする前になぜそうするのか考え抜いてから決断し、実行する生き物なのです。

ですから、ドクター殿……貴方も実はすでに選択をなさっている。そうではないでしょうか?

貴方は私たちと共にここまで歩んでこられた。

そして今、貴方はここにいる。

……これが私の結論です。

貴重なお時間をありがとうございました、ドクター殿。こんな長話をしてしまい申し訳ありません。ですが以前より確実にドクター殿のことを知ることができました。

――もうすでにこんな時間です。おそらく準備も整ったでしょう。貴方の安否も確認できましたし、あとは小隊を撤退させるだけ……

ではまた、ロドスで会いましょう、ドクター殿。

あぁ、最後に……

微々たる差だったとしても、未来というものは時の流れと共に過去となり、貴方の選択によって異なる一面を見せてくれるでしょう。

選択肢は常に貴方の手にあるのですよ。