潮汐の下 SV-7・戦闘後
守護者
今日はいっぱい拾えたんじゃない? 私とペトラおばあさんの分、それからベンチの分に……
うん、歌い手さんの分も。歌い手さん、きっと帰ってくるよね? お腹すかせて帰ってきたら、可哀想だもん。
残りは……まだ、こんなにいっぱい! 箱に入れておこうっと。
えっ、暖炉おじさんも欲しいの? んー、それじゃ先に、おじさんにあげるね。
わあっ、おじさんの腕に絡まってるのって海藻でしょ! それ、私にちょうだい! 歌い手さんから教わった……えっと、お酒! 海藻のお酒を作ってみたいの。
……あれ、ベンチは? またどこかに行っちゃった?
あぅ……あぅ~……
うぁ……うた……あぅ~?
……そうやって掴んじゃダメよ。
これ、あげるわ。
んわぅ……
……かじるのもダメ。それは食べ物じゃないのよ。
きわく、きわく……
……彼女を呼ぶのはやめて。
私の代わりにハープを持っていって。彼女に渡してほしいの。
彼女に伝えて……ううん、あなたじゃ伝えられないわね。
それに……これはまだ、お別れじゃない。
聞きたいことがあるから行くの。戻ってきたら、自分で言うわ。
上官、我々は今から山に爆薬を設置しに行く、ということでよろしいですか?
ああ。
……先ほど向こうで、何者が教会に入っていくのを見ました。
この都市で出会ったあのよそ者に……よく似ていましたが……
……
あの……上官、彼女は一体何者なのでしょう?
エーギルだ。
彼女は恐魚と戦っていました。
……私たちの他に、あの怪物を知っていて、あれとの戦いを専門とする人がいたなんて……
もし教会を爆破すれば……彼女も巻き込まれてしまうのでは?
元凶を解決することなく、この場所を破壊したところで無意味だ。だが、あの場所が奴らの温床となる以上、選択肢などない。
そう……でしょうか? ならば我々は、ここに異常をもたらした元凶を知る必要があると思うのですが……上官にも、確証がお有りでないのですか?
自分の任務以外のことは尋ねるな。
……わかりました。
それと、上官はお気になさらないと思いますが、それでも言わせてください……この都市の耐久構造では、爆発の威力に耐えることはできません。
街の南半分は崩壊する危険性がありますが、ここの住民はそれを知らないのです。
続けろ。
わ、私は……
……
私は、彼らを避難させたいと思っています。
たとえ、上官にとっての彼らが、奇妙で、問題があり……
……浄化されるべき存在だったとしても。
審問官!
ひっ……!
お前の職責は何か、言ってみろ!
はい!
「イベリアの国家存続のため、イベリアの敵と戦うため、イベリアの潔白と美徳を守るため、私は剣と灯りを高く掲げる!」
ならばお前は、彼らに判決を下さねばならない!
判決? 彼らに……死刑を言い渡すのですか?
上官、昔あった歌を、最後に聞いたのはいつですか? あのレコードはすべて壊れていますよね? あなたの機械も、長い間ほこりを被っていますよね?
私はあの歌を聞きました。あのエーギルが、彼らのために歌うのを聞いたのです。
あのような歌こそ、本来イベリアにあるべきものだと……私は思います。
だからこそ、彼らを殺す前に真実を知りたいのです。上官が黒幕を見つけ出したいとお思いになるのと同じように。
確かに彼らはまだ変異する可能性を秘めていますが……その時は、必ず私の手で彼らを浄化してみせます。ですが今は……今は、彼らを避難させてやりたいんです。
上官、もしご許可をいただけるのなら、私は今すぐ彼らの避難誘導に向かいます!
それがお前の判決か?
わかりません、上官!
アイリーニ、お前の判決は、目の前の人々だけに下されるものではない。それは同時に、他の人々への判決にもなりうるのだ!
お前が怪物に生の判決を下せば、人々には死の判決が下されることになる!
承知しております! そうした判決を、私はこれまで何度も下してきました!
お前の判決は、災いを阻止するものかもしれない。しかし同時に凶兆をもたらす可能性もあると忘れるな! 一人を救うため百人を殺すことも、一人を殺して百人を救うこともありうるのだ!
……承知しております、上官!
判決がもたらすであろう利害も、道徳と経典の間にある矛盾も……私はすべてわかっています!
私は、お前にそんなことを尋ねたか?
……
お前に訊いていることは一つだ……アイリーニ、お前はこの責任を背負うことができるのか?
お前が苦しみをもたらすならば、お前もまた苦しみを受けなければならない。お前が下した罪悪の判決よりも、多くの苦しみをだ。
お前にその度胸があるのか? 精神的な苦痛を受けた時、お前の信仰は揺らぎはしないか? もし、失敗して悪い結果をもたらしたとしても、もう一度立ち上がることができるのか?
……私は……私は揺らぎません。私には、背負う覚悟があります。
裁判所の一員となった時、既に覚悟をしていました。私には、できます。もし間違いを犯すことがあれば、処罰を受けましょう。私にはその義務があるのですから。
上官! 私は――
もう十分だ。
で、ですが……
十分だと言ったはずだ。お前の職責を果たせ、アイリーニ。
――はい、上官! 直ちに地域住民の避難誘導へ向かいます!
それから、上官……残りの爆薬は、サルヴィエント全体を爆破するのに十分な量ですよね。
ああ。
つまり……
その必要が生じた場合、お前の判決は私が取り消す。
……はい。
では、行って参ります、師匠。
誰だ?
ごきげんよう、大審問官殿。
おや、誰かと思えば。
ようこそ、吟遊の歌い手よ。