聖山降臨1101 OS-10・戦闘前
我らのイェラガンドに
爆発音と共に壁が崩れ、一行の前に静けさに満ちた洞窟が現れた。
やっぱり……ここからもっと奥まで通じてるみたい。
この場所からだと、入り口付近しか見えないね……もっと奥まで探索してみないと。
あれ、エンヤ?
巫女は、洞窟の中にこだまする呼びかけの声には答えず、先ほどまで饒舌だったというのに今では固く口を閉ざしている老人のほうへ目を向けた。
「我が居所ではなく、我が心に求めよ。」
……アドソ長老、行きましょう。
……
彼の両足は朽ちた樹木の根のように動かず、その喉は乾ききっていた。
彼はそうして、微動だにせずその場に立ち尽くしていた。
……私はここに留まり、あなた方が成すべきことを終えるまで待ちましょう。
でも、この中にイェラガンドが本当にいないのかを確かめないといけませんよね? エンヤと約束してたじゃないですか。
一緒に来てもらわないと――
私はここに留まる。そう言っただろう。
主が本当におられるのなら、自ら姿を現してもらわねば。
長老……
もしやあなたは、真相を究明することよりも、主の存在の証拠から目を背けることを選ぼうとされてはいませんか。
……そのようなことは、決して……
ここに答えなどないはずなのだ……
でしたらなぜ、我々をここへ導いておきながら、真相を見届けようとしないのですか?
……
いいや、主は決して存在してはならぬ。
それは、あなたたち皆が、知らぬ顔をしてはならない現実があるからだ。シルバーアッシュ家の長女エンヤ、そしてその同行者よ。
かじかんだ手で毛皮をなめす猟師や、埃で息を詰まらせているくず拾い、そして肌のひび割れた鉱石病患者……
泥の上に跪き、膝から血を流しながら、イェラガンドに救いを請い――それどころか、自らの苦しみに満ちた命を一日も早く終わらせたいとさえ願う、彼らの姿を見たことがあるか?
あなたたちが暖かな家で身を寄せ合い、グラスを交わし合っている時、あなたたちが目を向けようとしない禁域を――誰よりも貧しい人々の家を渡り歩いていたのは、私であり、蔓珠院だ。
彼らに平穏を取り戻させ、「誰一人見捨てられることはない」と、「生まれながらに長き夜の中に生きていようとも、そんなあなた方を愛する神がおられる」と繰り返し説いてきたのは私であって……
人々が微笑みと共に世を去れる国を築き上げたのは私たちなのだ。しかしあなたたちは、イェラガンドは――
かの気まぐれな宗主にして万物を家畜の如く扱う君主は、彼らを、イェラグのすべてを救えるはずであり、救うべきだというのに。
現実には、主は何をも成してはくれず、時折奇跡とやらをわずかに示しては、己の王権を示すばかり……!
何故最後に救いを得られるのは一握りの者だけなのだ!?
あなたたちは、あの魔物に、あの暴君に謁見し、私を、そして我らが苦心して築き上げた秩序を、主に否定させようと言うのか!?
私は、決して――
もはや老人を支えてくれる物など何一つなかった。その痩せた身体は、目には見えない大槌に打ち据えられたかのように土の上へと崩れ落ち、彼はとめどなく涙を流し始めた。
……どうか、どうか答えてくれ。
主はなぜ彼らの苦しみを知らず、なぜ理解してくださらぬのだ?
あなたたちはなぜ、沈黙していられるのだ……
それは……
大長老……
アドソ長老……お気持ちは理解できます。
我々は「神」の真の姿を目にすることを許されず、主の訓戒や創造物を通じて、主の存在を思い描くほかありませんでした。
ですが身共は、それでも信じていたいのです……
この洞穴の果てに着いた時、何を見ることになろうとも、身共の信仰は揺らぎません。主より授かりし美徳と戒律、知識と知恵には、いずれも意味があるのですから。
それに、身共はただ見極めたいだけなのです……イェラグの人々が進んで来た道を。
エンヤは何のためらいもなく身をひるがえすと、奥深い洞穴へと足を踏み入れて、信仰の示すほうへと歩み始めた。
「グロリアーナ」号甲板
……さあ、どれくらい経ったかしら。
我々が最後通牒を発してから、五時間五十七分になります。
ふむ……
あのエンシオディスがこんな態度で応じてくるのは、確かに想定外だったわね。
こんな形で始末をつけることになって、残念だわ。
では、命令を伝えてちょうだい。全軍――
あら、あれは……
閣下! イェラグ側の高速戦艦が一隻、接近してきます!
今、何隻と言ったの?
一隻……のみです。
望遠鏡を使わずとも、甲板に立つ誰もがその姿を目にすることができた。
遠く、白雪に覆われた山間に、銀灰色の高速戦艦がゆっくりと現れる。
恐らくはこの時、皆が同じことを考えていた。その戦艦は、向かい合う艦隊と比べても、またその背後にある山々に比べても、あまりに小さく見えたのだ。
エンシオディス……?
閣下、向こうの戦艦から通信が入りました。
あの船はイェラグの高速戦艦であり、指揮官はエンシオディス・シルバーアッシュだとのことです。
ヴィクトリアのカスター公爵にご挨拶申し上げたいと言っていますが……
ふうん?
でも、これは交渉の姿勢なのかしら。あるいは宣戦布告かしら。
判然としませんが、向こうは閣下と直接の会談を希望しています……「グロリアーナ」号でお話ししたいと。
……いいでしょう。
客人を出迎えてあげなさい。
お久しぶりです、親愛なるカスター公爵閣下。
元気にしていたようね、エンシオディス。確かに久しぶりだわ。
あなたのような若者が私の前に立つたびに、時の流れの速さを実感するわ。本当に耐えがたいことにね。
長らくご挨拶を差し上げられずにおりましたが、当時閣下が、私とカランド貿易を助けてくださった御恩を忘れたことはありません。
ふふっ……あなたはあまりに急いでヴィクトリアを離れたものだから、私たちの絆を置き去りにして、カスター家の援助だけを手にして行ってしまったようだけれどね。
私としては、いずれイェラグに招待してくれるものと思って楽しみにしていたのに。
ですが閣下はそれでもイェラグへお越しくださいましたので、どうあれ私も、イェラグの人間として礼を尽くさねばと思います。
「イェラグの人間」ね。
あなたはカランド貿易からすでに除名され、シルバーアッシュ家自体もヴィクトリアの内通者と見なされているのに――
あなたは実際、どんな立場で私に会いに来たのかしら?
答えは簡単です。
今この時、私はイェラグ唯一の実権を握る者として――
イェラグを代表して、あなたとの交渉に参りました。
わぁ、本当に広いところだな……
信じられない……本当にここが、人の作った場所だっていうの?
少なくとも、誰かがここを意図的に隠していたことは確かです。
エンヤ、こういう秘密の遺跡ってほかにもあるのかな?
どうでしょう、見たことはありませんが……
待って、何か聞こえなかった?
雪の上に石が落ちるみたいな音?
そうじゃなくて……機材に映ってるグラフを見るに、かなり規則的な音だと思う。まるで――
……心臓の鼓動みたいな。
それに、こっちの岩も……
表面の模様が、血管が脈打つみたいに、音に合わせて光ってる……
では、そうした現象を、どう説明すればいいと思いますか?
……この機器は、生体信号の存在を示してる。
どんなに信じがたくても、答えは一つ――
私たちは今、ある大きな生き物の体内にいるんだ。
……こんなの、あり得ない……
……
うわぁ!
何これ、転ぶところだったぞ。
何かの彫像に見えますね。私も先ほど、ぶつかりそうになりました……
探査機の非常用ライトを全部点けてみようか。
明かりで闇が払われると、近くに置かれていた障害物の姿が明らかになった。
これって、氷の彫刻……? どうして地面に伏せてるんだろう?
それも一つだけじゃないね。見て、あっちにも……ここに近付くほど彫像も増えてるみたい。
服装や身につけてるものを見るに、イェラグの歴史図鑑にあった古い時代の人の格好と一致してるね。でも、当時の人にここまでの彫刻技術なんてあったかな?
同世代の工芸品や彫像はシンプルなものばっかりだったと思うけど……エンヤはどう思――
エンヤ?
……
恐らくこれは彫像ではありません。
どういうこと?
この方たちは……歴代の巫女。
イェラガンドが昔姿を消した際、再びイェラグへお戻りくださるよう祈りを捧げた生贄たちです。
エンヤは「彫像」の顔に触れた。歯を食いしばり膨らんだ頬、まつ毛と顔に残った消えない涙の痕……
凍える寒さに命を落とした少女の顔には、震えと共に、死の間際に幻覚でも見ていたのか、安堵の色が現れたまま凍り付いていた。
全員が皆同じ方向を見つめたまま、凍り付いているのを見るに……
皆、主のもたらす答えを……探し求めていたのでしょう。
三人は「彫像」の視線を辿って、後ろを振り返った。
……何なの、これ? こんな大きな彫像、イェラグじゃ見たことないけど……
イェラガンドです。
これが過去の人々が見たもの……そして――
……
この高さにしろ体積にしろ、古代の技術とは思えないよ。これが昔からあったものだなんて、そんなはず……
でも、この洞窟は長いこと封鎖されてたんだよね。一体誰が、どうしてこんなことを……
不意にどこからか、細雪と共に寒風が吹きつけてきた。
エンヤ様、気をつけて!
あの彫像が……身共を呼んでいるのです。
心臓の鼓動のような音は、少しずつ耳をつんざく叫び声に変わっていく。そうして彼女には、仲間の呼ぶ声も、自分の呼吸音すらも聞こえなくなっていった。
今や彼女に感じられるのは、冷たく輝く大きな彫像の存在と、抑えきれない衝動だけだった。
彼女の手がその彫像の下部に触れた時、大きな衝撃がその場を飲み込んで、色鮮やかな光景が巫女の脳内に流れ込んでくる。
……ふぅ、今度はどこに行ったんだ?
さっきは確かにここにいたのに、草むらに影が見えたと思ったら、もういなくなってる……また見失っちゃったのかな?
過去の経験に即して、彼女は身をかがめた。そうして、初めて森に足を踏み入れた時、まだ幼かった彼女に、父が教えてくれたことを思い出す。
彼女は雪や剥き出しの土の上を歩き、樹の幹をよく観察した。だがそこには、獲物の痕跡は見受けられなかった。
彼女が追っていた大きな獲物は、どこかに消えてしまったかのようにすら感じられた。
「何も痕跡を見つけられなくても慌てることはない。大丈夫だ……ジョアンナ。」
「お前は猟師なんだから、きっと獲物を見つけられる。」
「なんせ、主は約束してくださったんだ。お前が弓を携えて森に入れば、その時森は肉と油を恵みとして授けてくれるって。だからお前は……」
――!
見えた、あそこだ!
茂みから飛び出した黒い影は素早く小道を跳び越えて、森の奥へと駆けていく。
少女は腕を振ると、後ろに向かって呼びかけた。
父ちゃん! 森の側面から回り込んで! 二人で挟み撃ちしよう!
すると、森の中から人の声がした。
よし行け、ジョアンナ! 俺がついてる! 一緒ならきっと仕留められるさ!
もし……もし、あれを本当に仕留められたら……
うちの家族は、この冬食べ物に困らないはず……!
うちの弟、妹だけじゃなくて……近所のおばあちゃんや、赤ちゃんの生まれたお姉さんにも分けてあげられる!
あの角はイェラガンド像を作るのに使って……それに、皮があれば妹に新しい服を作ってあげられるよな!
ジョアンナは幸福を感じており、その胸中は満ち足りていて、温かかった。
足にはますます力がこもり、両手の震えはぴたりと止まる。彼女は獲物に向かってどんどん近付いていった。
もうすぐ……追いつく!
イェラガンドよ、どうかあたしをお守りください……
クロスボウの矢が放たれ、空を切る音が静寂を破る。
少女は素早く駆けて行き、獲物を追って茂みを飛び越えた。あと少しで、その分厚い毛皮に手が届くはず――
あっ……
その時、ジョアンナは自分の手が空を掴んでいることに気付いた。
その腕にはただ、源石結晶だけが狂ったように広がっていく。
お前の信仰が何の役に立った?
イェラガンドはお前を守ってなどくれない……この大地が人を食らうと決めた時には、お前も獲物の一つに過ぎん。
……
ここは、良く知るあの部屋か。実際に見たことがなくとも、どこなのかははっきりとわかる。
狭く暗い室内には、松ヤニの煙の匂いが充満し、言いようのない熱気がこもっていた。
これは私のアイデアだった。
老人は椅子から立ち上がると、自らの足で部屋の大きさを測ろうとするように歩み出す。
一歩、二歩、五歩、十歩。
十歩……わずかそれだけで事足りる。
遮音性と断熱性に優れた、人目につかない狭い部屋。密談にはうってつけの場所だ。
こうした言葉で誘いをかければ、シルバーアッシュ夫妻は必ず……
……
ルカが私の意見を求めに来た時、私は何と言ったのだったか……
許されざる罪を犯さぬよう、真っ当な道に立ち返るよう、彼を諫められたのだったか?
あるいは、あの夫妻がもたらす新しいものすべてが、イェラグ人の心を打ち砕いてしまうだろうという彼の考えに、賛同したのだったか?
果てには、如何にしてブラウンテイル邸の広間の奥に隠すように小部屋を作れば良いかを教え……
……松ヤニと、燃えやすい素材、そして薪や点火装置を如何に揃えるべきかを、伝えたのだったか。
気付けば、その香りは鼻に痛みを覚えるほどに強くなっていた。
お前は、我ら二人の約束を忘れてしまったようだな。
ルカ……
本来ならば、お前はとうに蔓珠院の権力を奪い取り、私と共にイェラグのすべてをブラウンテイルの支配下に置いていたはずだ。
だというのに、お前は常々臆病で、何一つ成し遂げられんではないか!
違う……こんなはずでは……
我らがこの地位まで上り詰めるために、どれほどの血で手を汚してきたかを忘れたのか?
この子らを見ろ。ラタトスとスキウース……彼女たちもお前と血の繋がった家族なのだぞ。
この二人が、将来シルバーアッシュとペイルロッシュの刃によって傷つけられるのを黙って見ているつもりなのか?
……
私はこれまでの生涯で多くの嘘をつき、多くの人々を欺いてきた。
そうした人々の中には、私が親しみを抱く相手もいれば、信頼している相手もおり、また逆に、こちらへ親しみや信頼を寄せてくれる相手もいた……
かつての私は、強大な権力こそがすべての問題の解決策となると本気で信じていたのだ。
だが、私は間違っていた……
蔵経閣で過ごした数十年の歳月が、私が心に持つ愚かさを洗い流してくれたのだ。そうして私は、我が人生に残された、たった一つの使命を悟った。
私は真理に仕え、「イェラガンド」が我ら一人一人の魂に刻んだ美徳を追い求めねばならぬのだと。
そして私は、深く悔い改めた……
親しき隣人を傷つけた己の悪行、幼子の両親を奪った己の卑劣さ、権力への渇望、嘘で満ちた欺瞞を。
……
もし……イェラガンドが実在するのなら、何故こうしたすべてが起きることを許したと言うのだろうか?
どこからともなく火が現れる。
あるいは、数十年前に燃え出した炎が、綿密に作り上げられた牢獄となり、ついにその囚人を捕らえたのかもしれない。
それは幾千日にわたり燃え続け、そしてついに、凄まじい勢いで押し寄せてきて、アドソの目にしたすべてを飲み込んだ。
……ここから出ていけ。この凍らない湖を先に見つけたのは俺たちだ!
何言ってるの? 私たちが先にここを見つけたのよ! 器用で賢い私たちだからこそ、高い木の上から周りを見渡せるんだもの。私たちこそがこの水源の主よ!
確かにお前たちは良い目を持っている。おかげで山の水源も、梢の上の果実も見つけ出せるのだろうが、その四肢には力が足りず、行動も浮ついている。
俺たちがこの頑丈な腕で巨岩を壊し、ここへ通じる道を切り開かなければ、誰もこの場所に辿り着くことすらできなかっただろう!
いいや、この「心臓」の所有者となるべきは我々だ。
何故なら、我々は山間を跳び越え、お前たちを導き、毒虫や汚れによって湖が侵されぬよう、日夜ここを守ってきたのだからな!
これ以上争う必要などないだろう……
この湖には、汝ら全員に行き渡るほどの水があり、山も森も、皆が暮らしていくに十分な広さがあるのだから。
どうなってるの……この果実と作物は何? どうして何もないところから現れたの?
もしや、これはあなたが起こした奇跡か? ならば我らは、あなたを指導者として仰がねばならん。
これより我らはあなたのご意志に耳を傾け、あなたの導きに従うとしましょう……
汝ら全員が、我を呼び覚ましたのだ。
汝らが方々よりこちらに向かい、苦難を乗り越えたどり着いたことを、我は確かに見ていた。……汝らには、殺し合う性質もあれば、助け合う性質もある。
だが、争いによって果たせる目的は、分かち合うことや対話によって果たすこともできるものだ。この大地は生き延びるだけでも容易でない場所なのに、傷つけ合う必要などないだろう?
この先、汝らは互いを敵視することなく、大地のすべてを平等に分かち合うようにせよ。
陛下……イェラグの歴史書が完成いたしました。もう一度お目通しいただけますか。
我らは陛下の教えを一字一句とて忘れはせず、必ずや、陛下がお定めになった戒律を守って参りましょう。
いいや……その必要はない。
我が言葉と、これまで辿りし道は記憶してもらいたいものだが、何よりも重要なのは、心の中に初めからある善意を胸に刻むことだ。
常に自省し、己の心を見つめ、その心を磨き清めよ。汝らの心が善である限り、道を誤ることはないだろう。
これ以上、教えることは何もない。この先の道は、汝らのみで往くがよい。
我は、休息を取らせてもらおう。
陛下は去ってしまわれた……
あの方はこれまで通り生きよと仰られたが、三大名家に命を下せる存在なき今、我らはどのように他人を信じれば良いのだろうか?
いいや、無理だ……ただちに領地へ戻り、一族の者に伝えなければなるまい。他族の侵攻に備えよと!
えっ? 私が、ですか……?
左様、あなたが次の巫女様です。お召し替えのご準備をなさってください。
でも、私の家族は私を必要としているんですよ。もう種まきの季節ですし、私がいないと土地が耕せないんです。そんなことになったら、冬が来ればまた皆飢えてしまいます。
それに、前のお姉さんはどうしたんですか? 山を下りたあと、どこへ行ったんです? あの人が山へ登ってくれたらもう大丈夫だって言ってたじゃないですか。
……
我らには答えが必要なのです。誰かがその答えを持ち帰らねばならず、彼女に果たせなかったことは誰かが引き継がねばなりません。
これは偉大な行いであり、イェラグの命運はあなたにかかっているのです。どうかご出発ください、巫女様。
雲上より見守りしお方、イェラグの神、イェラガンドよ……
どうか……どうか、我らの元へお戻りください……
どうか……私の声にお返事を……
……寒い……お母さん、寒いよ……
イェラガンドは、一体……私たちに、何を求めて、いらっしゃるの……
身体が……震えちゃう……鈴の音で、イェラガンドの邪魔をして……怒らせちゃったら、どうしよう……
お願いします……私たちが、何か……間違っていたとしても……どうか、見捨てないで……
偉大なる、イェラガンド……
やはり、イェラガンドは――
すべてあなたの見た通りよ。
あなたは……
ヤエル……?
あら、ようやく気付いたの?
エンヤって……時々、私が思ってる以上にぼんやりしてるわよね。